認知症になると相続はどうなるの?相続前にできる4つの認知症対策!

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お父さん、通帳はどこにあるの?

「暗証番号を忘れちゃった…」

  • 認知症が進行した親の口座から、医療費や介護費用が引き出せない。
  • 相続が発生しても、認知症の母親がいるために遺産分割協議ができず、手続きが完全にストップしてしまう。

このような状況は、決して他人事ではありません。

現在、日本では6.7人に1人の高齢者が認知症を患っており、あなたの家族にも明日起こりうる現実なのです。

厚生労働省 認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計

しかし、多くの家族が「まだ元気だから大丈夫」「うちに限って…」と考え、対策を先延ばしにしています。

その結果、いざという時に数百万円、時には数千万円の財産が凍結状態となり、家族が途方に暮れるケースが後を絶ちません。

  • 「もし今、あなたの親が認知症になったら、財産はどうなりますか?」
  • 「遺産分割で家族がもめることなく、円満に相続を進められますか?」

この記事では、認知症による相続リスクを徹底解説します。

さらに、遺言書、家族信託、生命保険活用など、今すぐ実践できる具体的な対策をお伝えします。

大切な家族の未来を守るために。そして、あなた自身の老後を安心して迎えるために。

ファイナンシャルプランナー

今こそ、認知症を見据えた相続対策を始めませんか?

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目次

なぜ今、認知症を考慮した相続対策が重要なのか

日本の高齢化と認知症患者の増加

日本は急速に高齢化が進行しており、それに伴い認知症患者数も増加の一途をたどっています。

令和5年時点で、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.1%に達しています。

特に75歳以上の後期高齢者人口が65歳から74歳の前期高齢者人口を上回る状況となっています。

内閣府  令和6年版高齢社会白書

厚生労働省による推計では、2040年には認知症の高齢者数が約584万人に、さらに軽度認知障害(MCI)の高齢者数は約613万人にのぼるとされています。

これは、
65歳以上の高齢者のうち約15%、つまり6.7人に1人が認知症を患う計算となります。

この統計データが意味するのは、認知症が特別な病気ではなく、誰の身近にも起こりうる一般的な課題となりつつあるという現実です。

らいおんくん

「認知症」はこんなに身近な病気なんだね。

ファイナンシャルプランナー

相続の場面では、認知症があることで話し合いや手続きがうまく進まないことがあり、深刻な問題になることもあります

相続における認知症のリスク

認知症は、相続手続きにおいて様々な問題を引き起こす可能性があります。

具体的には、

  • 財産の凍結
  • 法的な手続きの停滞
  • 家族間のトラブル

などが挙げられます。

多くの方が「まだ大丈夫」「自分の家族に限って」と考えがちですが、その油断が将来的に大きな困難を招くことになりかねません。

特に一人暮らしの高齢者が増加している現代においては、認知症の初期症状に気づきにくく、いざという時に頼れる家族が身近にいないケースも少なくありません。

このような場合、本人の意思能力が低下した後に、財産管理や相続対策を行おうとしても、法的な制約から非常に困難な状況に直面します

しかし、これらのリスクは、早期に適切な対策を講じることで大幅に軽減することが可能です。

認知症が相続にもたらす深刻な影響

意思能力とは?認知症と法律行為の関係

相続手続きや関連する契約は「法律行為」にあたります。

法律行為が有効に成立するためには、その行為を行う人に「意思能力」が備わっていることが前提となります。

「意思能力」とは

自分が行う行為の意味や結果を理解し、判断できる能力のことです。
例えば、遺言を作成する能力(遺言能力)も、この意思能力の一種とされています。

認知症が進行し、判断能力が著しく低下すると、この意思能力がない(または不十分である)と判断されることがあります。

特に重度の認知症の場合には、意思能力を欠いているとみなされ、その人が行った法律行為は原則として無効となります。

この「意思能力の有無」が、認知症の方の相続におけるあらゆる問題の根源となります。

医学的な認知症の診断と、法的な意思能力の有無は必ずしもイコールではありませんが、認知症の症状が進行するほど、意思能力が認められにくくなる傾向にあります。

認知症が原因で相続手続きがストップするケース

遺産分割協議ができない

相続が発生すると、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行うのが一般的です。
この協議は、相続人全員の合意があって初めて有効に成立します。

しかし、相続人の一人に意思能力がないと判断される認知症の方がいる場合、その方は有効に遺産分割協議に参加することができません。

認知症の相続人を除外して行われた遺産分割協議や、他の相続人が勝手に認知症の方の署名や押印を代筆した遺産分割協議書は法的に無効です。

それどころか、代筆行為は私文書偽造罪という犯罪に問われる可能性すらあります。
この結果、遺産の分け方が決まらず、相続手続き全体がストップしてしまうのです。

預貯金の凍結・不動産の処分不可

遺産分割協議が成立しないと、被相続人名義の銀行口座は凍結されたままとなり、預貯金の引き出しが原則としてできなくなります。

一部、法定相続分に応じた仮払制度(上限150万円、または「当該銀行にある預貯金額×1/3×法定相続分」の少ない方)もありますが、多額の資金が必要な場合や、全ての預金を引き出すことは困難です。

また、不動産についても、売却、賃貸、担保提供、大規模な修繕といった行為は、共有者全員の同意が必要です。

遺産分割協議ができないために不動産が相続人全員の共有状態(法定相続分による共有)となった場合、認知症の共有者がいると、その方の有効な同意が得られないため、これらの行為が一切できなくなってしまいます。

相続放棄・限定承認ができない

被相続人に借金などのマイナスの財産が多い場合、相続人は「相続放棄」「限定承認」(プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する)を選択することができます。

しかし、これらの手続きも法律行為であるため、意思能力のない認知症の相続人本人が行うことはできません。

相続放棄や限定承認は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内という非常に短い期間内に家庭裁判所に申述する必要があります。

認知症の相続人のために成年後見人を選任しようとしても、その手続きには1~3ヶ月かそれ以上かかる場合があり、この3ヶ月の期限に間に合わないリスクが生じます。

相続税申告・納税への影響

相続税の申告と納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

遺産分割協議がまとまらない場合でも、原則として法定相続分で分割したものとして相続税の申告・納税を行わなければなりません。

しかし、遺産分割が確定していないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった相続税の負担を大幅に軽減できる特例の適用が受けられない、あるいは適用が非常に難しくなる可能性があります。

これらの特例は、遺産分割協議の成立を前提としているものが多いためです。

持病があっても入れる保険

相続発生「前」にできる認知症対策

認知症による相続の困難を回避するためには、ご本人が元気で判断能力が十分なうちに事前対策を講じておくことが何よりも重要です。

遺言書の作成

遺言の重要性

遺言書を作成しておくことで、誰にどの財産をどれだけ相続させるかを明確に指定できます。

これにより、相続発生後の遺産分割協議が原則として不要となり、相続手続きが大幅にスムーズになります。

相続人の中に認知症の方がいる、あるいはいずれ認知症になる可能性が懸念される場合には、遺言書は最も基本的かつ効果的な対策の一つです。

認知症の人が遺言を作成する場合の注意点

ご本人が認知症と診断された後でも、遺言書を作成すること自体は可能です。

しかし、その遺言書が法的に有効と認められるためには、「遺言能力」、つまり遺言の内容を理解し、その結果を判断できる能力が作成時にあったことが重要です。

この遺言能力の有無は、医師の診断書(特に長谷川式認知症スケールなどの客観的な評価を含むもの)や、作成時の状況(誰が立ち会ったか、本人の言動はどうかなど)を総合的に考慮して判断されます。

公正証書遺言の推奨

遺言書にはいくつかの種類がありますが、認知症対策としては「公正証書遺言」の作成を強く推奨します。

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成し、2人以上の証人も立ち会うため、形式不備で無効になるリスクが極めて低く、遺言能力についても公証人がある程度確認するため、後日その有効性が争われにくいという大きなメリットがあります。

任意後見制度の活用

任意後見制度とは

「任意後見制度」とは

ご本人がまだ十分な判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ信頼できる人(任意後見受任者)に、財産管理や身上監護(生活や療養看護に関する事務)に関する代理権を与える契約(任意後見契約)を結んでおく制度です。

この契約は公正証書で作成することが法律で義務付けられています。

判断能力が低下した「後」に家庭裁判所が後見人等を選任する「法定後見制度」とは異なり、任意後見制度では、判断能力がある「前」に、ご本人の意思で後見人や支援してもらいたい内容を自由に決めることができます。

任意後見制度のメリット

本人が信頼できる人を選べること、支援内容を具体的に決められること、将来への安心感が得られることなどが挙げられます。

任意後見制度のデメリット

任意後見監督人への報酬が継続的に発生すること(任意後見人への報酬も契約で定めることができます)、身上監護は事実行為(実際の介護など)は含まず法律行為に限られること、法定後見のような取消権がないことなどが挙げられます。

家族信託の活用

家族信託とは

「家族信託」とは

財産を持つ人(委託者)が、その財産の管理・運用・処分を信頼できる家族(受託者)に託し、その財産から生じる利益を特定の人(受益者。多くは委託者自身)が得るようにする契約です。
この契約も、ご本人の判断能力が十分なうちに締結する必要があります。

家族信託のメリット

家族信託の最大のメリットは、委託者であるご本人が認知症などにより判断能力を失った後でも、受託者である家族が信託契約で定められた範囲内で、引き続き財産の管理・運用・処分をスムーズに行える点です。

  • 資産凍結の回避

    預金口座が凍結されたり、不動産の売却ができなくなったりする事態を防げます。
  • 柔軟な財産管理

    成年後見制度のように家庭裁判所の厳格な監督下に置かれることなく、契約内容に基づいた柔軟な財産管理(例:収益不動産の積極的な運用、資産の組み換え、相続税対策のための処分など)が可能です。

家族信託のデメリット

家族信託のデメリットとしては、

  • 身上監護(介護契約の締結など)の機能は含まれないこと
  • 受託者には分別管理義務や報告義務などの責任が伴うこと、
  • 信託できる財産とできない財産があること
  • 税務上の取り扱いが複雑になる場合があること

などが挙げられます。

生前贈与の活用

生前贈与とは

「生前贈与」とは

ご本人が生きている間に、自分の財産を無償で他人に譲り渡すことです。
これも判断能力が十分なうちに行う必要があります。

2024年1月1日以降の税制改正

生前贈与を活用した相続税対策において、非常に重要な税制改正が2024年1月1日以降の贈与から適用されています。

相続財産への加算期間の延長

従来、相続開始前3年以内に行われた贈与は相続財産に持ち戻して相続税が計算されていましたが、この期間が7年に延長されました。

つまり、亡くなる前7年以内に行われた贈与は、相続税の課税対象となります。

延長された4年間の100万円控除

ただし、延長された4年間(死亡前3年超~7年以内)に行われた贈与については、その合計額から100万円を控除した残額が加算対象となります。

各種対策の比較

対策主な目的メリットデメリット主な費用目安
遺言書(公正証書)遺産分割方法の指定、相続手続きの円滑化意思を確実に反映できる、紛争予防、検認不要作成に手間と費用がかかる、遺留分への配慮が必要数万円~十数万円
任意後見制度判断能力低下後の財産管理・身上監護の準備信頼できる人を後見人に選べる、支援内容を事前に決定できる監督人への報酬が必要、取消権がない初期費用数万円、監督人報酬(月額数万円~)
家族信託判断能力低下後の柔軟な財産管理・承継資産凍結を回避、裁判所の関与が少ない、積極的な財産運用が可能初期費用が高め、身上監護の機能がない数十万円~(信託財産額による)
生前贈与相続税対策、計画的な財産移転毎年110万円まで非課税で贈与可能7年以内の贈与は相続財産に加算、長期的に実行する必要がある贈与税(110万円超の場合)
オンライン保険相談

相続発生「後」にする認知症対策

相続が発生した際に、相続人の中に認知症の方がいることが判明した場合、あるいは既に認知症と診断されている方がいる場合、相続手続きは通常よりも複雑になります。

まず専門家に相談

相続人の中に認知症の方がいる場合、自己判断で手続きを進めるのは非常にリスクが高いと言えます。

まずは、相続問題に詳しい専門家(弁護士、司法書士、税理士など)に速やかに相談することが賢明です。

弁護士
遺産分割協議の代理、家庭裁判所への各種申立て(成年後見、特別代理人選任など)、相続人間で紛争が生じた場合の交渉や調停・訴訟代理など、法的なトラブル全般に対応できます。

司法書士
不動産の相続登記、成年後見制度の申立て書類作成支援、遺言書検認申立て、家族信託契約書作成サポートなど、法務局や裁判所に提出する書類作成や登記手続きの専門家です。

成年後見制度(法定後見)の利用

法定後見制度とは

「法定後見制度」とは

既に判断能力が不十分になっている方(認知症、知的障害、精神障害など)を保護し、支援するために、家庭裁判所がその方の代わりに法律行為を行ったり、本人を助けたりする「成年後見人」「保佐人」「補助人」を選任する制度です。

本人の判断能力の程度に応じて、以下の3つの類型に分けられます。

類型判断能力の程度主な権限申立権者
後見ほとんど判断できない状態財産に関する法律行為全般についての代理権本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
保佐判断能力が著しく不十分申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為についての代理権同上
補助判断能力が不十分申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為についての代理権同上

後見・保佐・補助は、本人の判断能力に応じて段階的に用意されている制度です。

家庭裁判所の関与により、適切な範囲での権限付与がされるため、本人の意思を尊重しながら支援が可能です。

らいおんくん

判断能力の程度で利用できる制度が変わるんだね!

ファイナンシャルプランナー

申立てには医師の診断書などが必要になるため、早めの準備と専門家との相談が推奨されます。

法定後見制度のメリット

成年後見制度を利用する最大のメリットは、認知症の相続人がいても法的に有効な遺産分割協議を行うことが可能になる点です。

また、本人の財産が法的に保護され、不必要な支出や詐欺被害などから守られることも期待できます。

法定後見制度のデメリット

  • 費用負担

    申立て費用(数千円~数万円)のほか、成年後見人等への報酬が継続的に発生します。

    報酬額は家庭裁判所が決定し、本人の財産状況に応じて月額2万円~6万円程度が一般的ですが、管理財産額が多い場合はさらに高額になることもあります。
  • 財産処分の制限

    成年後見人等は、本人の財産を「本人の利益のために」管理・保護する義務を負います。

    そのため、本人の生活や療養に直接必要のない財産の処分は、家庭裁判所の許可が得られにくい傾向にあります。

特別代理人の選任

成年後見人(または保佐人・補助人)が、認知症の相続人と共に自身も相続人である場合、遺産分割協議において両者の利益が相反する(利益相反)可能性があります。

このような利益相反が生じる場合、成年後見人は被後見人を代理して遺産分割協議を行うことができません。

その際には、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。
特別代理人は、その特定の遺産分割協議においてのみ、認知症の相続人を代理します。

生命保険と不動産の戦略的活用法

生命保険を活用した認知症・相続対策

死亡保険金の非課税枠活用

被相続人が亡くなった際に支払われる死亡保険金には、相続税法上の非課税枠があります

具体的には、
「500万円×法定相続人の数」で計算される金額までは相続税がかかりません。

例えば法定相続人が3人いれば、1500万円までの死亡保険金は非課税となります。

ファイナンシャルプランナー

これは相続税の負担を軽減する上で非常に有効な手段です。

指定代理請求特約の活用

この特約は、認知症対策として非常に重要です。

保険金受取人ご本人が認知症などで保険金や給付金を請求できない状態になった場合でも、あらかじめ指定された代理人(通常は家族)が代わりに請求手続きを行うことができます。

これにより、必要な時に確実に保険金を受け取ることができ、介護費用や医療費の支払いに充てることが可能になります。

納税資金の準備と遺産分割対策

死亡保険金は、相続発生後比較的速やかに現金で受け取れるため、相続税の納税資金として非常に有効です。

また、遺産の大部分が不動産など分割しにくい財産である場合に、特定の相続人に生命保険金を残すことで、他の相続人との間で公平性を保つための代償分割の原資とすることもできます。

不動産を活用した認知症・相続対策

現状把握と課題の明確化

まずは、所有している不動産の種類、評価額、収益性、管理状況(空き家になっていないかなど)を正確に把握することがスタートです。

認知症の親名義の不動産は、本人の意思確認が取れないため、売却や大規模修繕などが極めて困難になるという課題を認識する必要があります。

相続発生前の対策

売却・資産の組み換え

管理が負担になっている不動産、将来的に価値が下がる可能性のある不動産、あるいは活用されていない遊休不動産は、本人の判断能力が確かなうちに売却し、管理しやすい金融資産に組み換えることを検討します。

家族信託の活用

不動産を信託財産として家族(受託者)に託すことで、本人が認知症になった後も、受託者が契約に基づいて不動産の管理、修繕、賃貸、売却などを柔軟に行うことができます。

相続発生後の対策

小規模宅地等の特例の活用

被相続人や生計を一つにしていた親族が居住していた宅地や、事業を行っていた宅地については、一定の要件を満たせば、その土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。

リバースモーゲージの活用

自宅を担保に金融機関から融資を受け、毎月利息のみを支払い、契約者が亡くなった際に自宅を売却して元本を返済する仕組みです。


老後の生活資金を確保しつつ自宅に住み続けられるメリットがあります。

家族の対話と専門家のサポート

認知症の家族とのコミュニケーションの重要性

認知症の症状や進行は一人ひとり異なります。
まずは、ご家族が認知症という病気について正しく理解し、ご本人の言動や変化に寄り添う姿勢が大切です。

本人の意思の尊重

判断能力が低下しているとしても、ご本人のこれまでの生き方や想いを尊重し、できる限りその意思を汲み取る努力が必要です。

家族会議の開催

ご本人が元気なうちから、家族全員で相続や将来の財産管理、介護について話し合う「家族会議」を定期的に開くことをお勧めします。

財産の状況、それぞれの希望や不安を共有し、共通認識を持つことで、いざという時の混乱や誤解を防ぐことができます。

相続トラブルの現状と主な原因

司法統計によれば、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の件数は年々増加傾向にあります。

「うちは財産が少ないから大丈夫」という考えは危険です。

実際には、遺産総額が5000万円以下のケースで最も多くの紛争が発生しており、1000万円以下の事件も全体の約3分の1を占めています。

厚生労働省 令和5年度 介護給付費等実態統計の概況

遺産に不動産が含まれる場合、特にそれが主な財産である場合(例:実家のみ)、分割が難しく、感情的な対立も絡みやすいため、トラブルに発展しやすい傾向があります。

専門家への相談

相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な手続きを進めるためには、早期の段階から専門家のサポートを得ることが不可欠です。

ファイナンシャルプランナー(FP)

個人のライフプラン(生活設計)全体を見据え、お金に関する包括的なアドバイスを行います。

相続においては、現状の資産状況の把握、将来のキャッシュフロー予測、生命保険の見直し、資産運用の提案など、相続を「点」ではなく「線」で捉えたサポートが期待できます。

宅地建物取引士(宅建士)

不動産の評価、売買仲介、賃貸管理、有効活用など、不動産取引に関する専門家です。相続財産に不動産が含まれる場合、その適正な評価や、売却・活用の可否、認知症の方が関わる不動産取引特有の注意点などについて具体的なアドバイスを提供します。

相続診断士

相続に関する現状の問題点を診断し、相続が「争続」にならないためのアドバイスや、必要な専門家への連携を行います。

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よくある質問

認知症と診断されたら、もう遺言書は作れませんか?

認知症と診断されたからといって、直ちに遺言書が作成できなくなるわけではありません。

重要なのは、遺言書作成時に「遺言能力」(遺言の内容を理解し、その結果を判断できる能力)があったかどうかです。
認知症の症状が軽度で、遺言能力が認められれば、有効な遺言書を作成することは可能です。

認知症の親の預金、家族が引き出すのは違法ですか?

原則として、預金は名義人本人のものであり、その引き出しには本人の明確な意思確認が必要です。

認知症の親の判断能力が低下している場合、家族であっても無断で預金を引き出すことは、後日、他の相続人との間で使途不明金としてトラブルになったり、場合によっては横領とみなされたりするリスクがあります。

成年後見制度を利用すると、家族は財産を自由に使えなくなりますか?

はい、その通りです。

成年後見人(保佐人・補助人を含む)は、ご本人の財産を保護し、ご本人の利益のために管理する義務を負います。
そして、その活動は家庭裁判所の監督下に置かれます。
そのため、ご本人の生活や療養に直接必要のない支出は原則として認められません。

家族信託の費用はどのくらいかかりますか?

家族信託の設定にかかる費用は、信託する財産の内容や価額、契約内容の複雑さ、依頼する専門家によって大きく変動します。

一般的には、専門家へのコンサルティング料、信託契約書の作成費用、不動産を信託する場合は登録免許税や司法書士への登記依頼費用などが発生します。
総額で数十万円から、信託財産が高額な場合は数百万円かかることもあります。

相続人が認知症の場合、相続税の申告期限は延長されますか?

いいえ、原則として相続税の申告・納税期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)は延長されません。

相続人の中に認知症の方がいて、遺産分割協議が進まない、あるいは成年後見人の選任手続きに時間がかかっているといった事情があっても、申告期限は変わりません。

まとめ 認知症になると相続はどうなるの?相続前にできる4つの認知症対策!

本記事では、認知症が相続に与える影響と、その具体的な対策について解説しました。

本記事の重要ポイントの再確認

日本の急速な高齢化と認知症患者の増加に伴い、認知症が関わる相続は誰にとっても他人事ではありません。

意思能力の低下は、遺産分割協議の停滞、資産凍結、相続税の不利益など、多岐にわたる深刻な問題を引き起こします。

これらの問題を回避・軽減するためには、ご本人の判断能力が確かなうちに、早期に対策を講じることが何よりも重要です。

  • 遺言書(特に公正証書遺言)は相続手続きを円滑化する基本です。
  • 任意後見制度は信頼できる人に将来の財産管理や身上監護を託せます。
  • 家族信託はより柔軟な財産管理と承継を実現し、資産凍結を防ぐ強力な手段です。
  • 生命保険は納税資金の確保や遺産分割の調整、非課税枠の活用に役立ちます。
  • 不動産は評価や管理、処分の方法を生前に検討し、必要に応じて組み換えや信託を活用することが賢明です。

まずは専門家への相談から

「まだ大丈夫」「うちは関係ない」と思っている方も、この記事を読んだことをきっかけに、ご自身やご家族のこれからについて少し立ち止まって考えてみてください。

相続対策や認知症への備えは、単に財産をどう分けるか、税金をどう減らすかという話ではなく、大切なご家族への想いを形にする行動でもあります。

ファイナンシャルプランナー

将来の不安を一人で抱える必要はありません。
少しでも疑問や心配があれば、ぜひ専門家に相談してみてください。

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