規模の大小や業種、業態を問わずに企業に課せられる法人税。納税を避けることはできませんが、節税して納める額を減額するのは違法ではなく、会社経営上、節税対策は重要なファクターになっています。
ですが、その一方で「税理士にすべて任せている」「税金は複雑でよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。もちろん、税理士のような専門家への相談は必要です。しかしながら、相談するのなら、自分の意見・考えを持ったうえで望むほうが得られるリターンがあるはずです。
細かい計算や専門知識まで学ばなくとも、概要とテクニックを知るだけでもずいぶん違うと思います。ぜひ御社にあった有益な方法を見つけてみてください。
2019年7月に法人向け生命保険の保険料に関する税制改正が行われました。
2019年7月8日以降の契約は新しいルールが適用されます。
詳細は国税庁HP/法人税基本通達9-3-5/保険料等をご参考ください。
尚、下記の記事でも税制改正の内容をわかりやすく解説しています。
法人税の概要
個人事業や会社員の場合だと、年間の所得に応じた所得税が課税されますが、会社化されて事業を営んでいる場合には、企業が利益に応じて納税する必要があり、それを法人税といいます。会社版の所得税ともいえるかもしれません。
おおまかにいうと、利益(益金)から、経費など(損金)を差し引いた金額に、税法上の税率をかけて計算します。控除が適用されるケースもあります。
法人税を節税する意味、メリット
そもそも、法人税を節税することで、得られるメリットはなんなのでしょうか。もちろん支出を減らすのが目的なのですが、節税によって新たな経営の可能性が生まれることは見逃せません。
例えば、以前Googleやamazon、Appleが日本に法人税を納めていないとの話題が、ニュースになっていたと思います。その是非は別として、なぜそうするかというと、節税によるメリットを理解しているからに他なりません。節税した分、企業にはそれだけの資産が残ります。資金があれば、借り入れを減らして利息を削減できたり、どんどん投資していけば、さらに大きな成長・発展をもたらすことにつながります。
1万円の売上げを増やしても、利益が1万円増えるわけではありません。経費や税金が発生するからです。しかし、1万円節税できたらどうなるか。単純に利益が1万円増える計算になります。売上げをアップして1万円の利益を生もうとすると、すぐには難しいですが1万円の節税なら比較的容易です。また、その規模を10万円、100万円と大きくして考えたとき、いったいいくら売上げを増やしたことになるでしょうか。そうなれば、節税のもたらすメリットの大きさがご理解いただけると思います。
会社の仕組みを変更して節税する
・会社の資本金、出資金の金額を見直してみる
資本金または資本金等によって、税額(税率)がかわってきます。1,000万円・3,000万円・1億円が税金面で影響のある「壁」です。基本的には額面が少なければ少ないほうが、節税につながるので節税対策として、一考の余地があります。概要は以下のとおりです。
( 1 ) 法人税:資本金1億円以下だと、所得金額800万円までは軽減税率15%が適用。
( 2 ) 法人事業税:資本金1億円以下だと、外形標準課税の対象外になる。
( 3 ) 法人住民税均等割:資本金額によって税額が変動。1,000万円を超えると高くなる。
また、資本金1,000万円以下のメリットとしては、消費税の節税もあります。1,000万円以下にすると、法人設立2年間は消費税が免税になるのです。
・決算期を変更して節税する
法人なら年1回の決算がありますが、特に理由なく3月や12月決算にしていたりしませんか?決算期に定めや変更の制限はありません。大規模な売上げがあるピーク時期が、例年同じ時期に集中するのなら、そこを事業年度の開始時期にしてしまえば、節税の対策がしやすくなります。
決算期の変更にあたっては、定款を変更しなければなりませんが、株主の3分の2以上の賛成を得ることで承認されますので、議決権を持つ人が大人数でないかぎり、その変更は容易でしょう。経営者1人が自社株をすべて所有しているのならば、議事録を残して税務署に届けるだけで実現できます。1年かけて、着実に節税対策を練りましょう。
日常からの意識を変えて節税する
節税は、日ごろから意識して徹底すれば、決算直前に慌てることも少なくなります。例えば、大きな支出を予定しているのなら、そのタイミングを調整することで節税になります。大幅に利益が出そうな年度に、あわせて大規模な設備投資を行っても良いです。ただし、『節税したいから設備投資する』というのは単なるムダづかいになってしまいますので、日ごろから意識をもって、計画を立てておくことが必要なのです。
つぎに、『役員の給与を定期同額給にする』方法。役員の給与を毎月一定額支給するだけで、損金に計上できるため、ハードルも低く、ぜひ行っておきたい節税対策です。また、役員の賞与を損金に入れるには、会計年度の最初の4ヶ月目までに支給時期・金額を税務署に届け出なければなりませんので、注意してください。従業員の賞与のように、期末支給で損金に計上ということはできなくなっています。役員本人が多額の賞与を支給することで、損金が拡大できてしまうためです。
なお、資本金を1億円以下の企業であれば、一定条件を満たす投資・雇用、及び研究や開発に関して優遇措置が利用できる場合があります。一例をあげると、特別償却を利用すれば減価償却として計上できる金額が増えることなどがあります。
こうして税制上の優遇措置があるのは中小企業の特権です。会社が順調に成長したとしても、ある程度までは資本金1億円以下をキープするのも、節税の観点からは有効な選択肢かもしれません。
決算期直前で節税する
決算期間際で、駆け込み的に節税を行うケースもあるでしょう。そんな場合に検討すべき節税対策をご紹介します。
まず、『全従業員への決算賞与支給』です。決算期末までに支給額を従業員に知らせ、決算から1ヶ月以内の間に支給すれば、損金に繰り入れできます。従業員の通知が期末まで、支給は次年度最初の1ヶ月でOKなので、駆け込みで節税するには活用しやすい方法でしょう。従業員も嬉しいですし、そのメリットは大きいはずです。
また、『売却損の出る不動産を売る』のも損金計上して節税するために、考えられる手段です。不要な資産で固定資産税を取られるくらいなら、帳簿価額より安い金額で売却して損金を出したほうが、結果的にメリットがあると思われます。固定資産の廃棄による『除却』も損金に計上できますから、固定資産帳簿を確認のうえ、検討してみてください。
もし、未回収の売り掛けなど、貸し倒れが発生しているのなら、『貸倒損失』として損金算入してしまうのも手です。要件を満たせればという条件付きですが、期末に臨時で大幅に収益がうまれた場合には、検討しても良いでしょう。同様に、要件が満たせば、貸倒れになりそうな売掛金を『貸倒引当金』として、損金に計上できることもあります。
法人向け生命保険に加入して節税する
損金を一時的に繰り入れて、節税する方法もあります。例えば、『法人向け生命保険への加入』です。法人保険には、保険料が損金算入できる商品があるため、経営陣を被保険者とする契約を締結することも、節税につながります。
万が一に備えての事業保障にもなり、解約返戻金が発生すれば、被保険者の退職金に利用できるケースもあるため、単純な節税以外にも、享受できる利益があります。節税の対策として、多くの企業で利用される対策です。