保険の加入は、将来の不安が叫ばれる現代においての転ばぬ先の杖。安心感を得るために、生命保険に入っているという方も少なくないでしょう。
生命保険に加入していれば、万一のことがあった場合の保険金や給付金、または満期時の返戻金など、一時的に所得を得ることがあります。そうなると、気になってくるのが、「どこまで税金がかかってしまうのか?」という点です。
せっかく入っていた保険で、多額の税金がとられて結果損をするような事態は避けたいもの。今回は、課税されるケースとそうでないケースについて、ご紹介していきます。
給付金を受け取ったときの税金
医療保険に入っていれば、ケガや入院時に保険商品の定めに応じた、入院給付金を受け取ることができます。状況だけ見ると、一時的に所得を得ているので『一時所得』の扱いとなり、所得税課税の対象になりそうな場面。しかし、実際は『所得税法施行例 第30条1号』にあるとおり、このような『不慮の事故・疾病などにより受け取る給付金は非課税』となっています。
都民共済やこくみん共済などである、保険契約期間中の配当金などを受けた際にも、所得税や住民税が課税されることはありません。
死亡保険金を受け取ったときの税金
被保険者が死亡して、生命保険金が支払われたケースでは、契約形態によって課税内容が大きくかわります。基本的に死亡保険金は、『遺族の生活保障』の色が強いため、相続された人が保険金の受け取りに際して、極力税負担が少なくすむように法整備がなされています。
それでは具体的な契約形態の例を取りあげ、ケース別の税金について考えてみましょう。
( 1 ) 保険の対象となる『被保険者』である夫が、保険料を支払う『契約者』で、保険金を受け取る『受取人』が妻や子のケース
こちらのケースでは、相続税として課税されます。ただし、死亡保険金に対しては500万円×法定相続人数の額までが非課税枠であり、3000万円+(600万円×法定相続人数)の額までは基礎控除の範囲内。つまり、あまりにも高額な相続がない限り、実質的には相続税の税負担はないといえるでしょう。
( 2 ) 保険の対象となる『被保険者』が夫、保険料を支払う『契約者』と保険金を受け取る『受取人』が妻のケース
契約者と受取人が同一である、このケースでは相続として使われないため、相続税はかかりません。しかし、所得に含まれますので、所得税の課税対象です。
所得税の税額は以下の計算に基づき、決定されます。
・『総収入-払込保険料-一時所得特別控除』で一時所得を計算
・『給与所得+一時所得×1/2』で総所得額を計算
・『社会保険料控除+生命保険控除+基礎控除+配偶者控除+扶養控除』で所得控除を計算
・『総所得額-所得控除額』で課税対象総所得額を計算
・『課税総所得額×定められた率-定められた控除額』で税額を計算
・『税額-源泉徴収』で所得税を計算
( 3 ) 保険の対象となる『被保険者』が夫、保険料を支払う『契約者』が妻、保険金を受け取る『受取人』が子のケース
保険料を支払う契約者が生きている本ケース。そのため、受取人たる子に課税されます。ただし、その扱いは贈与となり、贈与税が課税されてきます。贈与税は一般的に税負担が大きい税金といわれています。
・『保険金+配当金-基礎控除』で課税額を計算
・『課税額×定められた率-定められた控除額』で税額を計算
所得税や相続税に比べて、控除される金額が少ないためです。税負担を減らすなら、贈与扱いにならないように、契約形態の見直しにも目を配るべきでしょう。
年金を受け取ったときの税金
個人年金保険で年金を受け取ったと想定すると、扱いは雑所得になるので所得税と住民税の課税対象になります。受給した年金の年額より経費を差し引いて、控除した額が25万円以上だと源泉徴収されます。
満期の保険金を受け取ったときの税金
生命保険商品の保険対象者(被保険者)が、保険期間終了を迎えたときに支払われる『満期保険金』。終身保険は満期という概念から外れるので、満期保険金もありませんが、養老保険や学資保険は支払われる商品が多くなっています。
満期保険金についても、課税対象として扱われてしまうのですが、死亡時の保険金と同様に、契約の形態によって扱いが異なり、控除が活用できる場面もあります。それでは、複数のケースを見てみましょう。
( 1 ) 保険の対象となる『被保険者』である夫が、保険料を支払う『契約者』で、満期保険金を受け取る『受取人』も夫のケース
月々の保険料を支払っていた本人が、満期保険金も受給するケースは、最も多い事例でしょう。受け取った保険金は、一時所得なので所得税が課税。ただし、満期保険金を受け取るまでに支払った保険料は、控除できるので課税の対象は、差し引きした金額です。
・『満期保険金-保険料-特別控除』で一時所得の課税対象額を計算
特別控除額が最高50万円ですから、実際には課税対象にならないこともありえます。また、一時払い養老保険などは金融類似商品とされ、保険料を差し引いた金額から、所得税と住民税が分離課税されることになります。したがって、受け取る満期の保険金は源泉徴収後の金額です。
( 2 ) 保険の対象となる『被保険者』である夫が、保険料を支払う『契約者』で、満期保険金を受け取る『受取人』が妻のケース
保険料を支払う契約者と満期保険金の受取人が同一でないケースは、満期保険金の贈与とみなされ、贈与税の課税対象にあたります。ただし、贈与税の非課税枠は、110万円なので、満期保険金とその他の贈与を合算して、110万円以下であれば課税されません。
なお、満期保険金単体や、ほかの贈与とあわせて110万円を超えるのなら、超えた分が課税対象になります。
・『保険金+配当金-基礎控除』で課税額を計算
・『課税額×定められた率-定められた控除額』で税額を計算
贈与税は所得税よりも高い税率です。満期返戻金に関する税金についても、契約を見直すことで税負担を軽減できることになります。
生命保険の加入だけでも節税効果がある
生命保険によって条件を満たした際に支払われる、給付金や保険金に関わる税金ついて解説しました。しかし、もう1点忘れてはならないのが、払込保険料による『生命保険料控除』です。
生命保険控除は、払込保険料に応じた金額が所得から控除され、所得税、及び住民税の節税ができる制度。確定申告はもちろん、会社の年末調整などで出てくるので、馴染みのある方もいるでしょう。この控除は平成24年1月に改正されており、これまでの『一般保険料』『個人年金保険料』にくわえて、『介護医療保険料』の項目が新設されました。
控除額の上限は、新制度から以下のようになっています。
・一般生命保険料:最大4万円まで控除
・個人年金保険料:最大4万円まで控除
・介護医療保険料:最大4万円まで控除
改正前、合計10万円だった控除額が12万円に拡充されています。ただし、これらは最大額であり実際の控除額については、各々が計算して求めなければなりません。
所得税の生命保険料控除
・年間払込保険料が20,000以下 → 年間払込保険料の全額を控除
・年間払込保険料が20,000超40,000円以下 → 年間払込保険料×1/2+10,000円を控除
・年間払込保険料が40,000円超80,000円以下 → 年間払込保険料×1/2+20,000円を控除
・年間払込保険料が80,000円超 → 一律40,000円を控除
住民税の生命保険料控除
・年間払込保険料が12,000円以下 → 年間払込保険料の全額を控除
・年間払込保険料が12,000円超32,000円以下 → 年間払込保険料×1/2+6,000円を控除
・年間払込保険料が32,000円超80,000円以下 → 年間払込保険料×1/2+14,000円を控除
・年間払込保険料が56,000円超 → 一律28,000円を控除
生命保険に関わる税金は多岐に渡り、複雑ですが知れば得するケースも多くあります。上手く活用されることをオススメします。