平成27年1月の税制改正で、相続税と贈与税の税率が見直されました。
相続税については増税となり、従来に比べ相続税の課税対象者は50%増える見込みと言われています。
今まで資産家や富裕層にしか関係がないと思われていた相続税が、皆さんにも直接関係のある話になるかも知れません。
今回は、平成27年度の税制改正とその対策方法についてご案内します。
相続税・贈与税の税制改正
まず、税率について改めて確認しておきましょう。
平成27年1月1日の法改正で細分化された税率は、以下のとおりです。
相続税の税率について
相続税率
法定相続分に応ずる取得金額 | 改正前の税率 | 改正後の税率 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 10% |
3,000万円以下 | 15% | 15% |
5,000万円以下 | 20% | 20% |
1億円以下 | 30% | 30% |
2億円以下 | 40% | 40% |
3億円以下 | 45% | |
6億円以下 | 50% | 50% |
6億円超 | 55% |
2億円超で税率が上がっていることが分かります。
相続税課税対象者が増えた理由は基礎控除の変更
相続税課税対象者が増えたのは、基礎控除の金額が変更となったことが挙げられます。
相続税基礎控除
改正前
5,000万円+1,000万円✕法定相続人
改正後
3,000万円+600万円✕法定相続人
例)法定相続人 3人(妻と子2人)の場合
改正前 5,000万円+1,000万円✕3=8,000万円
改正後 3,000万円+600万円✕3=4,800万円
改正後は改正前と比べ、基礎控除額が6割となってしまい、4,800万円を超えると相続税が課税されることになります。
贈与税の税率について
贈与税率
基礎控除後の課税価格 | 改正前の税率 | 改正後の一般税率 (一般贈与財産) | 改正後の特例税率 (特例贈与財産) |
---|---|---|---|
200万円以下 | 10% | 10% | 10% |
300万円以下 | 15% | 15% | 15% |
400万円以下 | 20% | 20% | |
600万円以下 | 30% | 30% | 20% |
1,000万円以下 | 40% | 40% | 30% |
1,500万円以下 | 50% | 45% | 40% |
3,000万円以下 | 50% | 45% | |
4,500万円以下 | 55% | 50% | |
4,500万円超 | 55% |
特例税率というのは、父母や祖父母などの直系尊属から、20才以上の子や孫が財産を取得した場合には、特例税率といって、一般の贈与税率よりも税率が軽減されます。
直系尊属以外からの贈与については、一般税率で計算することになります。
贈与税は、一般税率の一部を除いていは減税の方向です。
同じ1,000万円を譲り受ける場合でも、相続税では10%、贈与税では30%となり、20%も差がついてしまい、増税でも相続の方が有利だということが分かります。
生命保険を活用した相続税・贈与税への対策
ここからは、生命保険を活用した相続税、贈与税の具体的な節税方法について触れていきます。
生命保険は被保険者(保障の対象者)のケガや病気、または死亡時に保険金という形でお金を受け取れる商品となりますが、保障以外のメリットとして、税金負担の軽減が挙げられます。
保険商品の契約形態によって違いはありますが、保険金を相続として受け取るケースでは、贈与に比べてかなりの節税に繋がります。
トータルでみると、預金などを受け取るよりも手元にキャッシュを残すことができます。
生命保険の課税パターン
相続税
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | |
---|---|---|---|
相続税 | 被相続人 (例:父) | 被相続人 (例:父) | 相続人 (例:配偶者もしくは子) |
契約者、被保険者が共に夫、死亡保険金受取人が妻または子どもを指定している場合、受取人には相続税が課税されます。
所得税
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | |
---|---|---|---|
所得税 | 夫 | 妻 | 夫 |
契約者が夫、被保険者が妻、死亡保険金受取人が夫の場合は、所得税が課税されます。
贈与税
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | |
---|---|---|---|
贈与税 | 夫 | 妻 | 子 |
契約者が夫、被保険者が妻、死亡保険金受取人が子の場合は、贈与税が課税されます。
生命保険を使った相続税節税の王道パターン
死亡保険金は相続税の課税対象となるのですが、この保険金は残された遺族の生活保障にもあたるため、一定の額が非課税とされています。
死亡保険金の非課税枠
死亡保険金の非課税枠は500万円 × 法定相続人の人数 = 相続税非課税限度額で計算することができます。
例)法定相続人3人(妻、子2人)
500万円✕3=1,500万円
保険金のうち、1,500万円は非課税ということになります。
現預金で1,500万円持っていると課税されてしまう場合でも、現預金を保険に切り替えることによって、1,500万円に相当する相続税を節税することができます。
また、相続対策には終身保険が使われることが多いのですが、中途解約した際の満期返戻金が100%以上なることもありますので、節税以外に資産形成でも効果を発揮します。
不動産を活用した相続税への対策
不動産を購入し、相続することで相続税を節税する方法もあります。
預貯金など現金を相続すると額面がそのまま相続税の評価額となり、税率がかかってきてしまいます。
一方で、現金ではなく不動産で相続すると、評価額が下がり結果的に相続税を軽減することができます。
小規模宅地等の特例などにより、土地はおおよそ80%、建物は60%で評価することになり、相続税を節税することができます。
相続時清算課税制度を活用した贈与税への対策
親子間の贈与を円滑に行う場合、相続時清算課税制度の活用も検討できます。
相続ではなく、生前贈与をすることで早いうちに、子に財産を譲渡するための制度です。
この制度を利用すると、2,500万円までの贈与について、非課税となります。
ただし、相続が発生した場合には、相続時清算課税制度を利用した生前贈与の分も財産に加算される形で相続税が計算されます。
相続時の評価額によっては、相続税が0円ということもあるので、多くの控除が見込める場合などに大きな効果を発揮します。
相続時精算課税制度では、贈与する財産の種類や回数に制限はありませんが、摘要するための条件があります。
贈与を受ける側(受贈者)の要件
- 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること
- 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者または贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること
- 贈与を受けた時に、日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有している
- 贈与者の直系卑属である推定相続人であること※
- 贈与者の孫であること
- 贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上であること
贈与する側(贈与者)の要件
- 贈与する年の1月1日において、60歳以上であること
なお、2,500万円を超える金額については、税率が一律20%に設定されます。
例)4,000万円の生前贈与を行った場合
(4,000万円 - 2,500万円)× 20% = 300万円
相続時に財産として評価されるものがなければ、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)があるため、300万円は還付対象になりこともあります。
生前購入を活用した相続税への対策
昨今、『終活』ブームが起こっていると言われていますが、お墓や仏壇の相続前購入も節税にかかわってきます。
たとえば、財産を預金で500万円持っていて、全額が相続されるとします。そのまま相続すれば、課税対象は500万円です。
しかし、相続前に200万円のお墓を購入しておくと、その金額が非課税となり、相続税の課税対象は300万円ということになります。
このように、生前にお墓や仏壇を購入しておくだけで、相続税課税対象額の引き下げができます。
まとめ
相続税や贈与税、所得税は早めに計画的に対策をすることで、合理的に節税が行えます。
また、税負担の軽減方法にも様々あります。
特に生命保険は相続税の非課税枠を使えることと同時に、相続税納税資金としても活用することできる唯一の商品です。
相続税の節税を検討されているのであれば、生命保険の加入から検討されてみてはいかがでしょうか?