「今期は調子が良くて、利益が大きく出そうだ!」
経営者の皆様にとっては何よりも嬉しいことだと思います。
しかし唯一心配になることは、法人税をいったいどのくらい支払うことになるのか?
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1500万円!!
ウソでしょっ!?
こんな例は以外に多いようです。
法人税・法人住民税・法人事業税を合計した法人実効税率は、国際比較をしても高い分類に入り、約30%の負担にもなります。
法人実効税率を30%とすると、仮に5,000万円の利益が発生した場合には、1,500万円もの法人税を支払い、3,500万円しか手元に残りません。
経営者の皆様であれば、法人税の支払いを出来る限り少なくして、手元の資金を多く残すという考え方は、ごく自然だと思います。
法人保険をに活用することで、大きな節税効果があるだけでなく、経営の安定化にも繋がり、使い勝手の高い経営ツールとなります。
今回は、法人保険の基礎知識とその節税効果について解説致します。
2019年7月に法人向け生命保険の保険料に関する税制改正が行われました。
2019年7月8日以降の契約は新しいルールが適用されます。
詳細は国税庁HP/法人税基本通達9-3-5/保険料等をご参考ください。
尚、下記の記事でも税制改正の内容をわかりやすく解説しています。
法人保険は節税に効果的!
法人で加入する生命保険の支払保険料は、損金に算入することができます。
つまり、利益を生命保険料で圧縮することができるので、それだけ法人税を減らすことができます。
法人保険が節税となる例
利益:5,000万円
生命保険料:3,000万円
税務処理:全額損金計上
税率:30%
節税対策をした場合
最終利益 5,000万円-3,000万円=2,000万円
税金 2,000万円×30%=600万円
節税対策をしない場合
5,000万円×30%=1,500万円
節税対策をした場合、しなかった場合と比べて、税金を900万円減らせたことになります。
法人保険には解約返戻金がある!
法人保険の保険料を支払い、法人税を減らすことに成功しましたが、同時に手元のキャッシュを減らすことになってしまいました。
これでは法人保険を使ってムダ使いをしたようにも思えます。
実は、節税対策に法人保険が使われる最大の特徴は、法人保険はお金が貯まるということです。
法人保険に加入し、保険料支払時に節税をしながら、お金のたまった保険を解約をすることで、解約返戻金を保険会社から得ることができます。
法人保険は解約返戻金の受け取り方がポイント
保険を解約し、解約返戻金を受けとったときの経理処理は、解約返戻金から資産計上分(全額損金の場合は0円)を差し引いた額を雑収入として計上します。
そしてこの雑収入は課税対象になります。
解約した時に今まで節税した分がまとめて課税されます。
これが利益の繰り延べと言われる所以です。
しかし、解約返戻金の使い方をあらかじめ考えておけば、雑収入への課税を少なくしたり、完全になくすことができます。
退職金で雑収入の課税をなくす方法
例として、経営者が勇退する際の退職金で考えてみたいと思います。
退職金は、税制上全額損金に算入可能となります。
保険を解約したときの解約返戻金と同額を退職金として支払えば、プラス・マイナス0で、雑収入に対する課税は「0」ということになります。
退職金以外にも設備投資や、従業員の退職金、不動産売却による特別損失の穴埋めなど、解約返戻金の資金使途によって、単なる課税の繰り延べのみならず、大きな節税効果が得られます。
また毎年、黒字決算であれば良いのですが、時には赤字決算になってしまうこともあります。
そういった場合には、生命保険の一部もしくは全部を解約することで、雑収入が計上できるため、黒字化することができます。
黒字であれば銀行融資も受けやすくなるため、経営の安定化にも使えるツールとなります。
節税できる法人保険の要件
法人保険における契約要件は、以下のとおりとなります。
契約者:法人
被保険者:社長など役員
保険金受取人:法人
例えば、保険金受取人を役員の遺族としてしまうと、法人で支払っている保険料は、役員個人の給与として取り扱われ、役員個人の所得税・住民税・社会保険料などの負担が増えてしまいます。
契約者、被保険者、保険金受取人が、上記の契約内容になっているか、保険を検討する場合には営業担当者に確認してください。
また保険の種類によって、支払保険料の損金に算入出来る割合が異なります。
最もポピュラーなのは、逓増定期保険や長期平準定期保険、養老保険、がん保険に代表される、1/2損金(半分損金・半額損金)です。
逓増定期保険の中には保険料の1/3だけを損金として取扱うもの、1/4だけを損金として取扱うものなどもあります。
最近になって、全額損金算入できる生命保険も多く商品化されてきました。
その代表が生活障害保障型定期保険です。
法人保険の1/2損金の代表でもある、逓増定期保険と全額損金の代表、生活障害保障型定期保険をご紹介します。
押さえておきたい法人保険1:逓増定期保険
逓増(ていぞう)という見慣れない漢字を使っていますが、徐々に増えるという意味です。
逓増定期保険は、死亡時の保険金額が保険期間の経過とともに徐々に増加する定期保険のことです。
死亡保険金額は徐々に増え続け、加入時の5倍まで増え続けます。
逓増定期保険の最大の特徴は、損金性と貯蓄性
実は、逓増定期保険は、途中で解約するケースがほとんどとなります。
逓増定期保険における最大の特徴は、保険料を損金で計上しつつ、お金を貯められることです。
逓増定期保険の損金性
逓増定期保険のほとんどは1/2損金(半分損金・半額損金)となります。
支払保険料 1,000万円
の場合、半分だけ損金にすることができます。
損益計算書に定期保険料として500万円
貸借対照表に前払保険料として500万円
を計上します。
利益を500万円分圧縮することができるので、法人税(33.8%)を169万円分、減らすことができました。
逓増定期保険の貯蓄性
お金の貯まり率(保険用語では解約返戻率)が最も高いのが、逓増し始める前の時期となり、この時に保険を解約することで、効果的にお金を貯めることができます。
逓増定期保険は一生涯保障される保険ではないため、決められた時期に満期を迎えます。
保険商品や年齢・性別によっても異なりますが、保険加入時から5年~10年後にお金の貯まり率が最も高くなり、それ以降は下がり続け、満期を迎える頃には0となります。
解約する時期を間違えると、大きな損失にも繋がりますので、「解約する時期」についてだけは、営業担当者任せにせず、ご自身で必ず確認するようにして下さい。
押さえて起きたい法人保険2:生活障害保障型定期保険
生活障害保障型定期保険という長い名前の保険商品ですが、死亡時の保障だけではなく、一定の介護状態になった場合にも保険金を受け取ることができます。
生活障害保障型定期保険の最大の特徴は、損金性
生活障害保障型定期保険が人気を集めている理由は、逓増定期保険同様、お金が貯まる保険でありながら、支払保険料の全額を損金算入できることにあります。
生活障害保障型定期保険の損金性
支払保険料 1,000万円
損益計算書に定期保険料として1,000万円
貸借対照表には何も計上しません。
利益を1000万円圧縮することができるので、法人税(33.8%)を338万円分、減らすことができました。
生活障害保障型定期保険の貯蓄性
逓増定期保険と同様、保険商品や年齢・性別によっても異なりますが、保険加入時から5年~10年後にお金の貯まり率が最も高くなります。また、満期時期に近づくほど、解約返戻率は下がり続け、満期時には0になります。
解約返戻金のピークは確実に確認しておきましょう。
まとめ
今回は、法人保険の効果についてまとめました。
法人保険の魅力は、お金を貯めながら、節税ができるという点にあります。
今回は、逓増定期保険と全額損金算入できる生活障害保障型定期保険をご紹介しましたが、損金算入できる保険は他にもあります。
決算間近で内容を確認せず、駆け込み的に加入することはオススメできません。
会社にどのような保険が合っているかについて、保険担当者の話をよく確認し、吟味した上で、保険に加入することをオススメします。