インターネットで検索してみると、役員退職慰労金規程のテンプレートはたくさん見つかります。
テンプレートをそのまま使って大丈夫なのか、お金を支払って社会保険労務士にお願いした方が良いのか、心配になる方も多いと思います。
そこで今回はこのまま使っても問題のない、役員退職慰労金規程のテンプレートを用意しました。
規定の意味も解説していますので、不要な条項があれば削除し、ご自身の会社に合う内容にして、無料で役員退職慰労金規程を作ってみましょう。
規程作成の手順は
- 役員退職慰労金規程を作成する
- 取締役会にて承認する
- 議事録を作成する
これだけです。
この記事を読んで頂いて、規程を制定できるようにしていますが、やっぱり分からないということであれば、社会保険労務士にお願いするといいでしょう。
またこちらの記事も参考にして下さい。
役員退職慰労金規程と取締役会議事録のダウンロード
ここから役員退職慰労金規程と取締役会議事録のPDFをダウンロードをすることができます。
自由にコピペして使って下さい。
役員退職慰労金規程(モデル)
ここからはダウンロードしてもらった役員退職慰労金規程の解説です。
第1条(総則)
当法人の取締役または監査役(以下、役員という)が退職したとき、または役掌が大きく変更し、日常業務に関与しなくなったときは、株式総会の決議を経て退職慰労金を支給することができる。
退職だけでなく、分掌変更時にも退職慰労金を支払える旨、定めておいた方が望ましいです。
分掌変更とは、後継者に事業を継承する際に、代表取締役から非常勤取締役になった場合など、役員としての地位又は職務の内容が激変した状態です。
退職はしていないものの、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、退職金を支払うことができます。
第2条(基準額)
退職した役員に支給すべき退職慰労金は次の各号のうちいずれかの額の範囲内とする。
- この規程に基づき取締役会が決定した金額にして、株主総会において承認された確定額。
- この規程に基づき計算すべき旨の株主総会の決議に従い、取締役会が決定した額。
役員退職慰労金は役員報酬の後払いとみなされており、定款または株式総会をもって定めています。
一般的には、株主総会決議にて、取締役会に詳細の決定を一任します。
第3条(基準額の計算)
役員退職慰労金の支給額は、第5条および第7条により増減する場合を除いて、次の各項目をそれぞれ乗じた額とする。
- 退任時最終報酬月額
- 役員在任年数
- 退任時役位別倍率表
ただし、算出額に万円未満の端数がある場合は万円単位に切り上げる。
役位 | 倍率 |
---|---|
取締役会長 | 2.0 |
取締役社長 | 2.3 |
取締役副社長 | 1.8 |
専務取締役 | 1.8 |
常務取締役 | 1.6 |
取締役 | 1.6 |
監査役 | 1.2 |
(注)上記倍率はあくまでも参考数値となります。
役員退職慰労金の支給額の算定方法を規定します。
役員退職慰労金の算出は、役員退任時の最終報酬月額、役員の在任年数、役位の3つの要素から計算します。
計算された役員退職金に第5条の功労金や第7条の減額を加味して、最終的な役員退職慰労金を決定するのが一般的です。
なかでも重要なのは、役員退職金の算出基準です。
役員退職慰労金のお手盛り防止の趣旨に合致するように、恣意的な判断要素が入り込まないものであることが必要です。
第4条(在任期間)
- 役員在任年数は、就任の月から起算し、死亡または退任の月までとする。
- 役員在任年数の計算において、1年未満は月割計算とする。ただし1ヶ月未満は1ヶ月に切り上げる。
役員在任年数が退職金の計算の基礎となっていますので、その在任年数の計算方法を明確に規定しておく必要があります。
第5条(功労金)
取締役会は退職役員の功績を評価し、在任中の功績が顕著であったと認められた場合、第3条で定めた役員退職慰労金のほかに、その3割を超えない額を限度として加算することができる。
功労金の支給について問題となるのは、役員退職慰労金に対する加算割合です。過去の判例で、3割までの功労加算が認めらています。
第6条(弔慰金)
任期中に死亡した時は、次の金額を弔慰金として支給することができる。
- 業務上の死亡の場合 死亡時の役員報酬月額✕36ヶ月分
- その他の死亡の場合 死亡時の役員報酬月額✕6ヶ月分
この規定によって、弔慰金を支給した法人は福利厚生費として、役員退職慰労金とは別枠で損金算入可能することができます。
また、受給した遺族は非課税で弔慰金を受け取ることができます。
第7条(減額・不支給)
取締役会は、次の各号のいずれかに該当する場合は、第3条で定めた役員退職慰労金を減額し、または支給しないことができる。
- 会社業績の不良その他、やむを得ない事由により第3条により計算された金額を支給することが困難と認められる事情がある場合。
- 退職にあたり所定の手続きおよび事務処理等をなさず、会社業務の運営に支障をきたした場合。
- 退職にあたり会社の信用を傷付け、または在任中に知り得た会社の機密をもらすことによって、会社に損害を与えるおそれのある場合。
- 在任中不都合な行為があり、役員を解任された場合。
- その他前各号に準ずる事情または行為があり、取締役会が適当と認めた場合。
役員が会社に損害を与えた場合や、会社の業績不良など、役員退職慰労金を支給することがふさわしくないか、または困難である場合を想定して、減額・不支給の規定を設けています。
第8条(支給時期)
役員退職慰労金等の支給時期は、原則として株主総会の決議または承認後6ヶ月以内とする。ただし、経済の景況、会社業績などにより支給することが困難と認められた場合は、支給時期を延期または分割して支給することができる。
役員退職慰労金の支給は、株主総会、取締役会の決議または監査役の協議後、遅滞なく支給しなければなりませんが、会社の業況から、すぐに支給できない場合などに備えて、本規定を定めておきましょう。
第9条(死亡役員に対する退職慰労金)
- 在任中死亡した役員または分掌変更後に死亡した役員に対する退職慰労金は遺族に支給する。
- 遺族とは、配偶者を第1順位とし、配偶者のない場合には、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。なお、該当者が複数いるときには代表者に対して支給するものとする。
民法上、受給権者が定められている死亡退職金は、当該受給者の固有の財産として取扱います。
この規定がない場合には、退職慰労金は相続財産として、相続人の法定相続分に応じて支払うことになります。
固有の財産は、死亡退職金以外に生命保険金も、保険金受取人固有の財産となります。
生命保険金は、民法上、相続財産にはなりません。
保険金の受取人の設定は慎重に決めるようにしましょう。
第10条(生命保険契約の締結)
- 会社は役員退職慰労金等の支給に際し、一時的な資金負担を軽減するため、○○保険会社と役員を被保険者、会社を保険金受取人とする生命保険契約を締結する。
- 役員が退職した場合、役員退職慰労金等の全部または一部として、この保険契約上の名義を退職役員に変更の上保険証券を交付することがある。この場合、保険契約の評価額は、解約返戻金相当額とする。
- 新任の役員については、就任後速やかに加入手続きをとるものとする。
役員退職慰労金の支払資力の担保のため、役員を被保険者とする生命保険契約を締結する場合には、その旨の規程に定めることが望ましいです。
○○保険会社には具体的な保険会社の名前を入力して下さい。
第11条(使用人兼務役員の取扱い)
この規程により支給する役員退職慰労金規程等のなかには、使用人兼務役員に対し使用人として支給すべき退職給与金を含まない。
使用人(従業員)を兼務した役員が退任した場合に、使用人としての退職金と役員としての退職金を明確に区別します。
役員としての退職慰労金の支給については、株主総会が必要ですが、使用人としての退職金は株主総会は不要です。
第12条(規程の改正)
- この規程は、取締役会の決議をもって、随時改正することができる。
- 前項にかかわらず、既に株主総会において決議を得た特定の役員に対して支給する役員退職慰労金等は、その決議の時に効力を有する規程による。
当規程の改正権限を明確にし、改正された場合にいつから新規程が適用されるのかを定めておけば、適用の際の無用な混乱を避けられます。
第13条(施行日)
この規程は、平成○○年○○月○○日から施行し、施行後に退職する役員に対して適用する。
以上
○○には、運用を開始する時期を入力して下さい。
役員退職慰労金規程制定の取締役会
役員退職慰労金規程を制定する場合には、取締役会での承認が必要になります。
そして、取締役会の決議を証明する書類として、議事録を作成することが重要です。
取締役会の議事録のテンプレートを用意しましたので、参考にして下さい。
役員退職慰労金規程制定の取締役会議事録例
取締役会議事録
平成○年○月○日、午前10時00分より、当会社の本店会議室において、取締役会を開催した。
出席取締役数 3名(全取締役数 3名)
定款の規定により、代表取締役Aは議長となり、下記の議案について可決決定の上、午前10時30分散開した。
議案 役員退職慰労金規程の制定に関する件
議長は、当会社の今後退任する役員に対する役員退職慰労金、死亡退職金および弔慰金の金額ならびに支給手続きに関する規程を制定したい旨を述べ、議場に諮ったところ、満場一致をもって承認可決した。
以上の決議を明確にするため、この議事録を作り、出席取締役全員がこれに記名押印する。
平成○年○月○日
(商号)○○株式会社 取締役会
議長 代表取締役 A
出席取締役 B
同 C
取締役会の議事録を作成すれば、手続きは完了です。
あとは、退職金を支給するタイミングまでは手続きは不要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
これなら簡単に役員退職慰労金規程を作れるんじゃないかと思っていただけると嬉しいです。
よく分からないという場合には、取り急ぎこの内容で役員退職慰労金規程を制定し、変更する点があれば、改めて取締役会にて承認を得て変更すれば問題ありません。
また、役員退職金の原資づくりは計画的に積み立てることが不可欠です。
生命保険を使うと節税をしながら、お金をためることができます。
生命保険の活用も視野に入れながら、自社の退職金制度を作るようにしましょう。