労災上乗せ保険とは、政府の労災保険(以下、政府労災)の給付に上乗せして、会社が従業員に補償するための保険です。仕事中や通勤中の事故・病気が対象で、会社が負う損害賠償にも備えられます。業務災害補償保険、労働災害総合保険などとも呼ばれます。
「政府労災に入っているから大丈夫」と考える経営者は少なくありません。しかし政府労災には、慰謝料が出ない、休業中の収入が約8割までしか補われないなど、決まった範囲があります。この記事では、政府労災で足りない部分、会社が負う責任、労災上乗せ保険の補償の内容と保険料の考え方、自社に必要かを判断する材料を説明します。
- 労災上乗せ保険は、従業員への上乗せ補償(法定外補償)と、会社への損害賠償(使用者賠償責任)に備える任意の保険です。
- 政府労災は慰謝料を補償せず、休業補償も給付と特別支給金を合わせて約8割までのため、足りない分を会社が求められることがあります。
- 労災上乗せ保険への加入は法律上の義務ではありませんが、取引先から加入を求められる場面があります。
- 必要かどうかは「事故が起きる頻度」ではなく「起きたときに会社が払う金額」で考えると判断しやすくなります。
労災上乗せ保険とは?政府労災に「上乗せ」する会社の保険
労災上乗せ保険は、政府労災では足りない補償と、会社が負う損害賠償に、会社が備えるための任意の保険です。一般的に、次の2つの補償で構成されます(商品や契約内容によって異なります)。
| 補償 | 内容 | 保険金を受け取る人 |
|---|---|---|
| 法定外補償 | 従業員のケガ・病気・死亡に対して、政府労災の給付に上乗せして会社が支払う補償金を補う | 会社(会社が従業員・遺族に渡す) |
| 使用者賠償責任 | 従業員や遺族から、会社が損害賠償を求められたときの賠償金や争訟の費用を補う | 会社 |
法定外補償の保険金は、会社が補償規程などにもとづいて従業員や遺族に補償金を支払う場合に、会社に支払われます。会社は受け取った保険金を従業員や遺族に渡す必要があり、請求のときに従業員側が内容を知っていることを示す書類を求められることがあります。

労災上乗せ保険のいろいろな呼び方
同じ種類の保険が、保険会社や場面によって違う名前で呼ばれています。
| 呼び方 | よく使われる場面 |
|---|---|
| 労災上乗せ保険、上乗せ労災 | 一般的な呼び方 |
| 業務災害補償保険、業務災害総合保険 | 保険会社の商品の種類の呼び方 |
| 労働災害総合保険 | 法定外補償と使用者賠償をまとめた保険の呼び方 |
| 任意労災、法定外労災保険 | 政府労災(法定の労災)と区別するときの呼び方 |
呼び方の違いよりも、補償の中身(どの補償が付いているか、誰が対象か)を確認することが大切です。業務災害補償保険という名前で探している場合は、業務災害補償保険とはもあわせてご覧ください。会社が負う損害賠償への備えは、使用者賠償責任保険とはで詳しく説明しています。

政府労災との違い:出るもの・出ないもの
政府労災は、治療・休業・障害・死亡などに対して、法律で決まった額を給付します。一方で、慰謝料、休業の最初の3日間、給付で足りない収入の残りなどは出ません。この差が、会社の負担や、従業員・遺族からの損害賠償の請求につながることがあります。
| 項目 | 政府労災 | 労災上乗せ保険で備えられるもの(一般的な例) |
|---|---|---|
| 治療費 | 療養(補償)等給付で原則として自己負担なし | 入院・通院の補償を上乗せ |
| 休業中の収入 | 休業4日目から、給付基礎日額の60%+休業特別支給金20%(合計約80%) | 休業の補償を上乗せ |
| 休業の最初の3日間 | 出ない(業務災害は、会社が労働基準法にもとづき平均賃金の60%を支払う) | 商品により補償あり |
| 後遺障害 | 障害等級に応じて年金(1〜7級)または一時金(8〜14級) | 等級に応じた補償金を上乗せ |
| 死亡 | 遺族(補償)等年金・一時金、葬祭料等 | 死亡の補償金を上乗せ |
| 慰謝料 | 出ない | 使用者賠償責任で、会社が払う賠償に備える |
| 給付を超える損害(将来の収入など) | 出ない | 使用者賠償責任で備える |
(出典:厚生労働省「労災保険給付の概要」令和8年7月1日現在、労働基準法第76条)
通勤中の事故(通勤災害)も政府労災の対象です。ただし、休業の最初の3日間を会社が補償する義務は、業務災害の場合だけです。通勤災害の扱いは通勤災害とはで説明しています。
会社が賠償するとき、政府労災の給付はどこまで差し引かれるか
会社が損害賠償をするとき、政府労災から出た給付の一部は賠償額から差し引かれます。ただし、次のものは差し引かれないと、最高裁が判断しています。
- 慰謝料:政府労災の給付は心の苦痛を埋め合わせるものではないため、慰謝料から差し引けない(最高裁 昭和58年4月19日判決)。
- 特別支給金:休業特別支給金や障害特別支給金は、賠償額から差し引けない(最高裁 平成8年2月23日判決)。
- 将来の年金:差し引けるのは実際に支払われた分が原則とされた(最高裁 昭和52年10月25日判決)。その後の法改正で、一定の範囲で会社の賠償を猶予する仕組みができています(労働者災害補償保険法 附則第64条)。
「政府労災から十分に出ているから、会社はあまり払わなくてよい」とは限りません。差し引き方は複雑なため、実際の事故では弁護士に相談してください。会社が払う賠償の内容は、労災で会社が払う損害賠償・慰謝料・示談金で詳しく説明しています。休業の最初の3日間など、会社が負担するお金は労災の会社負担で説明しています。
労災上乗せ保険は加入の義務がある?
労災上乗せ保険への加入は、法律上の義務ではありません。従業員を1人でも雇えば原則として加入が必要な政府労災とは違い、労災上乗せ保険は会社が任意で入る保険です。
ただし、取引の条件として加入を求められることがあります。特に建設業では、元請から現場に入る条件として加入を求められる場面があります(建設業の労災上乗せ保険は、別のカテゴリで説明する予定です)。
なお、政府労災の加入手続きをしていなかった期間に労災事故が起きると、会社はさかのぼって保険料を徴収されます。さらに、支給された給付額の100%または40%を、会社が徴収されることがあります。上乗せ保険を考える前に、まず政府労災の手続きが済んでいるかを確認してください。
(出典:厚生労働省「労災補償」、同「労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度の強化について」)
- 政府労災で足りない補償と、会社が負う損害賠償に備える任意の保険です
- 政府労災では、慰謝料や休業の最初の3日間などは出ません
- 加入は法律上の義務ではありませんが、取引の条件として求められることがあります
労災で会社が負う安全配慮義務と損害賠償の責任
会社には、従業員が安全に、健康を損なわずに働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。この義務を怠ったと判断されると、会社は政府労災とは別に、従業員や遺族から損害賠償を求められることがあります。重い後遺障害や死亡の事案では、賠償額が1億円を超えることもあります。
会社が問われる責任と法律の根拠
| 会社が問われる責任 | 根拠 |
|---|---|
| 安全配慮義務 | 労働契約法第5条 |
| 債務不履行による損害賠償 | 民法第415条 |
| 不法行為・使用者責任(慰謝料を含む) | 民法第709条・第710条・第715条 |
| 労働基準法の災害補償 | 労働基準法第75〜80条(政府労災から給付されれば、その分は免れる:同法第84条) |
労災の損害賠償で会社の責任が問われた判例
| 年 | 事案 | 裁判所の判断 |
|---|---|---|
| 1975年 | 自衛隊員が車両整備中にひかれて亡くなった事案(最高裁 昭和50年2月25日判決) | 雇う側(この事案では国)は、働く人の生命と健康を守るよう配慮する義務を負うと、最高裁が初めて示した。民間企業の義務は、のちに労働契約法第5条に定められた |
| 2000年 | 新入社員が長時間労働でうつ病になり自殺した事案(最高裁 平成12年3月24日判決) | 会社の責任を認め、差し戻し後に約1億6,800万円で和解 |
| 2010年 | 新入社員が入社約4か月後に急性心不全で亡くなった事案(京都地裁 平成22年5月25日判決、大阪高裁 平成23年5月25日判決) | 会社に加えて社長を含む取締役4人の個人の責任も認め、連帯して約7,860万円の支払いを命じた |
数字で見る労災の発生状況(令和7年・令和7年度)
心の不調(精神障害)による労災は増えています。令和7年度に、仕事が原因の精神障害で労災と認められたのは、前年度より26件増え、1,082件でした。脳・心臓の病気で労災と認められたのは217件で、そのうち67件は亡くなった事案です。
(出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」2026年7月15日公表)
事故は、特別な機械がない職場でも起きます。令和7年の休業4日以上の労災は135,333人で、最も多いのは転倒(37,195人)でした。仕事中の事故で亡くなった人は700人です。
(出典:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」2026年5月27日公表)
当社で扱った法人契約の傷害保険の事故(2012〜2026年、691件)を集計すると、支払いの半分以上は5万円未満の通院の補償でした。一方で、後遺障害の支払いは10件だけでしたが、合計額は通院の389件とほぼ同じでした。事故の多くは小さく済みますが、まれに起きる重い事故が、会社の負担の大部分を占めます。
(出典:当社で扱った法人契約の傷害保険の事故の集計)
代理店の現場でも、業務中の事故で従業員の方が亡くなったと聞いたことがあり、死亡事故は現実に起こるものだと感じました。
安全配慮義務の詳しい内容は安全配慮義務とは、心の不調による労災は精神障害の労災認定、長時間労働は過重労働とはで説明しています。
- 安全配慮義務を怠ると、政府労災とは別に損害賠償を求められることがあります
- 重い後遺障害や死亡の事案では、賠償額が1億円を超えることもあります
- 特別な機械がない職場でも、転倒などの事故は起きています
労災上乗せ保険の補償内容・対象者・保険料
ここでは、労災上乗せ保険で補償される内容と補償されない場合、対象になる人、保険料の決まり方と税金の扱いを順に説明します。
労災上乗せ保険の補償の内容と、補償されない場合
労災上乗せ保険では、一般的に、死亡・後遺障害・入院・通院・休業への補償と、使用者賠償責任が基本になります。そのほか、ハラスメントなどの雇用トラブル、法律相談の費用、事故後の費用を特約で加えられます。補償の内容は商品や契約内容によって異なります。
| 補償の種類 | 内容(一般的な例) |
|---|---|
| 死亡・後遺障害の補償 | 従業員が亡くなった、または後遺障害が残ったときに、会社が支払う補償金を補う |
| 入院・通院・休業の補償 | 入院・通院の日数や休業に応じた補償金を補う |
| 使用者賠償責任 | 会社が負う損害賠償額から政府労災の給付などを差し引いた額をもとに、賠償金や争訟の費用を補う |
| 雇用慣行賠償(特約) | セクハラ・パワハラ・不当解雇などで会社が負う損害賠償と争訟の費用を補う |
| 法律相談費用(特約) | 労災や損害賠償のおそれがある場合の弁護士などへの相談費用を補う |
| 事業者費用(特約) | 死亡事故後の葬儀の費用、代わりの人員の採用費用などを補う |
業務上の病気は「政府労災の認定」が条件になることが多い
ケガの補償は、政府労災の給付決定を待たずに支払う設計が一般的です。一方で、過労死・精神障害・脳や心臓の病気など「業務上の病気」は、政府労災の認定が出た場合に限って補償する設計が一般的です。ただし、政府労災で認定されても、保険金が支払われない場合もあります。
労災上乗せ保険で補償されない主な場合
- 地震・噴火・津波によるもの(特約で補償できる場合があります)
- 故意や重大な過失によるもの
- 無資格運転・酒気帯び運転などによる事故
- 医学的な裏付けのない、むちうちや腰痛など
- 賃金の不払いによる損害(未払い残業代など)
未払い残業代は、原則として補償の対象外です。当社に寄せられた相談では、退職した役職者から弁護士を通して残業代を請求され、「名ばかり管理職」と判断されて会社が支払った例がありました。このとき、弁護士への相談費用は保険から支払われましたが、残業代そのものは会社の負担でした。
次の記事で、くわしく説明しています。
- 後遺障害の等級と補償の考え方:労災の後遺障害
- ハラスメントへの備え:雇用慣行賠償責任保険とは、パワハラで訴えられたら
- 名ばかり管理職の問題:名ばかり管理職とは
労災上乗せ保険の対象になる人:パート・役員・下請け・派遣
労災上乗せ保険の対象は、パート・アルバイトを含む従業員が基本です。役員・下請けの人・派遣社員・業務委託の人などは、契約で追加して対象にする形が一般的です。
| 対象になる人 | 確認すること |
|---|---|
| 正社員・パート・アルバイト | 一般的に対象。人数をもとに保険料を決める方式では、名簿や人数の区分を確認する |
| 役員・社長 | 契約で対象に加える形が多い。役員は補償額を別に決められる場合がある |
| 下請けの人・一人親方 | 契約で対象に加えるか確認する |
| 派遣社員 | 派遣先として対象に加えるか確認する |
役員は原則として政府労災の対象外
特に注意したいのが役員です。代表権や業務執行権を持つ役員は、原則として政府労災の対象外です。一定の規模以下の中小企業の役員は、労働保険事務組合を通じて、政府労災に「特別加入」できます。特別加入していない役員は、業務上の病気で政府労災の認定が出ないため、上乗せ保険でも補償されにくくなります。
(出典:大阪労働局「労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲」)
(出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」)
役員の労災は役員・社長の労災、パート・アルバイトはパート・アルバイトの労災、派遣社員は派遣社員の労災で説明しています。

労災上乗せ保険の保険料の決まり方と税金の扱い
労災上乗せ保険の保険料は、業種と売上高、または人数と補償額で決まることが多く、金額は会社ごとに違います。保険料の目安を知りたいときは、見積もりで確認するのが確実です。
| 方式 | 決め方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 売上高をもとにする方式 | 業種と売上高(建設業は完成工事高)で保険料を決める | 従業員の名簿が不要で、人の入れ替わりが多い会社でも手続きが簡単 |
| 人数をもとにする方式 | 対象者の人数と補償額で保険料を決める | 役員・正社員・パートなど区分ごとに補償額を変えられる設計がある |
当社に寄せられる相談で、経営者が最も気にされるのは保険料の負担です。労災上乗せ保険は使う場面が少ないため、「払い続けているだけ」と感じやすい保険でもあります。保険料だけで比べるのではなく、補償額・対象者・特約の内容をそろえて比べることが大切です。補償額の決め方は労災上乗せ保険の選び方と補償額の決め方で説明しています。
労災上乗せ保険の保険料・補償金と税金
- 保険料:法人が契約者で、従業員全員を補償の対象にした場合、保険料は一般的に損金(経費)にできるとされています。
- 役員など特定の人だけを対象にし、保険金の受取人をその人や遺族にしている場合などは、扱いが変わることがあります。
(参考:国税庁 タックスアンサー No.5364。定期保険・第三分野保険についての整理です) - 従業員が受け取る補償金:心身の損害に対する見舞金や損害賠償金は、一般的に所得税が非課税とされています。
(参考:国税庁 タックスアンサー No.1700) - 遺族が受け取る弔慰金など:業務上の死亡では、普通給与の3年分を超える部分が相続税の対象になります。
(出典:国税庁 タックスアンサー No.4120)
税務の扱いは契約内容によって変わることがあります。具体的には税理士に確認してください。
- 業務上の病気は、政府労災の認定を補償の条件とする設計が一般的です
- 役員・下請け・派遣社員などは、契約で追加して対象にする形が一般的です
- 保険料は業種と売上高、または人数と補償額で決まることが多いです
労災事故が起きたときに会社がすることと保険金の流れ
労災事故が起きたら、まず従業員の救護を行い、政府労災の手続きと労働基準監督署への報告を進めます。労災上乗せ保険は、早めに保険会社や代理店に連絡します。
事故後の手順と保険金の流れ
- 従業員を救護し、必要なら救急車を呼ぶ。
- 事故の状況を記録する(日時・場所・作業内容・目撃者)。
- 政府労災の請求の手続きを手伝う。
- 死亡や休業4日以上の場合は、遅滞なく「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に出す(原則は電子申請。休業4日未満は3か月ごとにまとめて報告)。
- 労災上乗せ保険の保険会社・代理店に連絡する。
- 従業員や遺族から賠償の話が出ても、保険会社に相談する前に賠償を約束しない。
保険会社の承認なく賠償の責任を認めると、保険金が減る場合があります。保険会社が示談交渉をしない商品もあるため、契約内容を確認してください。退職した元従業員から、後になって請求されることもあります。

死亡事故で出るお金以外の問題
当社では、死亡事故が起きると、お金以外の問題も出ると考えています。たとえば、ご遺族への説明の仕方、お見舞金の額、葬儀への対応などです。事前に補償規程や見舞金の規程を決めておくと、いざというときに迷いが減ります。
次の記事で、くわしく説明しています。
- 手続きの流れ:労災申請で会社がすること
- 死亡事故:労災の死亡事故で会社がすること
- 見舞金:労災の見舞金の決め方、慶弔見舞金・弔慰金の相場と規程の作り方
- 報告:労働者死傷病報告とは
- 救護と記録のあと、政府労災の手続きと報告を進め、保険会社に早めに連絡します
- 保険会社に相談する前に、賠償を約束しないことが大切です
- 補償規程や見舞金の規程を事前に決めておくと、迷いが減ります
労災上乗せ保険が必要かの判断と、加入窓口の選び方
労災上乗せ保険が自社に必要かを判断するためのチェックリストと、加入する窓口の種類、選ぶときの確認点を説明します。
労災上乗せ保険が自社に必要かの判断:チェックリスト
労災上乗せ保険が必要かどうかは、「事故が起きる頻度」ではなく「事故が起きたときに会社が払う金額」で考えると判断しやすくなります。事故の頻度は低くても、死亡・後遺障害・損害賠償が起きれば、会社の支払いは大きくなります。
当社では、小さな会社でも業務中の事故は起こり得るため、少なくとも使用者賠償への備えは検討したいと考えています。「保険に入っているから安心」とも言い切れないため、今の補償で足りるかを次の項目で確かめてください。
| チェック項目 | 当てはまれば |
|---|---|
| 高所作業、機械の操作、運転、重い物を運ぶ作業がある | 死亡・後遺障害の補償額を確認する |
| 60歳以上の従業員がいる | 休業4日以上の労災にあった人の約3割(31.3%)は60歳以上(令和7年、厚生労働省)。補償の対象と額を確認する |
| 月の残業が多い従業員がいる | 過労や心の不調による労災と、使用者賠償を確認する |
| 役員が政府労災に特別加入していない | 役員の補償を確認する |
| 取引先や元請から加入を求められている | 求められている補償の条件を確認する |
| 補償規程・見舞金規程がない | 規程を作り、保険と金額を合わせる |
| 1億円規模の賠償を、会社の預金で払えない | 使用者賠償責任の支払限度額を確認する |
| ハラスメントや解雇のトラブルが心配 | 雇用慣行賠償の特約を確認する |
ほかの保険を先に検討できる場合
当社では、労災上乗せ保険が「入らなくてよい」と言える会社は、ほとんどないと考えています。強いて言えば、会社を立ち上げたばかりで、まだ人を雇っていない、または雇っている人がごく少ない時期であれば、ほかの保険を先に検討することはあります。ただ、人を雇っている以上は損害賠償を求められるおそれがあるため、なるべく早めに備えておくのがよいと考えています。
福利厚生として補償を広げる使い方
ある程度の規模の会社では、業務中以外のケガ、病気による入院、がんの治療などまで補償を広げ、福利厚生として採用や定着に活かす使い方もあります。在職中は個人の医療保険を減らせるという考え方もありますが、退職後は個人で備える必要があります。
60歳以上の従業員が多い会社は高年齢労働者の労災防止(エイジフレンドリー指針)もあわせてご覧ください。病気で長く休む従業員への備えはGLTD(団体長期障害所得補償保険)とはで説明しています。

労災上乗せ保険に加入する窓口の種類と、選ぶときの確認点
労災上乗せ保険は、保険会社・代理店のほか、商工会議所などの団体の制度や共済からも加入できます。どの窓口がよいかは一概に言えないため、補償の内容・対象の範囲・保険料の決め方をそろえて比べることが大切です。
| 確認点 | 見ること |
|---|---|
| 補償額 | 死亡・後遺障害の補償額、休業の補償の日数 |
| 対象者 | パート、役員、下請けの人、派遣社員が含まれるか |
| 病気の扱い | 過労死・精神障害が対象か、政府労災の認定が条件か |
| 使用者賠償責任 | 付いているか、支払限度額はいくらか |
| 特約 | 雇用慣行賠償、法律相談費用、事業者費用など |
| 他の保険との重複 | すでに入っている保険と補償が重なっていないか |
| 事故のときの対応 | 示談交渉をしてもらえるか、相談の窓口はどこか |
保険料だけで比べず、自社の作業・人員・取引先の条件に合った補償になっているかを確認してください。
- 必要かどうかは、事故が起きたときに会社が払う金額で考えると判断しやすくなります
- 保険料だけで比べず、補償の内容・対象の範囲・保険料の決め方をそろえて比べます
よくある質問
まとめ
- 労災上乗せ保険は、政府労災の上乗せ補償(法定外補償)と、会社への損害賠償(使用者賠償責任)に備える任意の保険です。
- 政府労災では、慰謝料、休業の最初の3日間、休業中の収入の残り約2割などが出ず、会社の負担や賠償につながることがあります。
- 業務上の病気は政府労災の認定が補償の条件になることが多く、役員は特別加入の有無で補償が変わります。
- 必要かどうかは、事故が起きたときに会社が払う金額と、補償規程・見舞金規程の有無で考えます。
代理店の現場から(監修者コメント)
労災上乗せ保険の記事一覧
参考資料
- 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(2026年5月27日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73382.html
- 厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況について」 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/r07_sanko.pdf
(参考資料) - 厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』を公表します」(2026年7月15日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74476.html
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労災保険給付の概要」(令和8年7月1日現在) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001743908.pdf
- 厚生労働省「労働災害が発生したとき」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/rousai/index.html
- 厚生労働省「労災補償」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html
- 厚生労働省「労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度の強化について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/topics/tp051003-1.html
- 厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました(令和7年1月1日施行)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei_00002.html
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-5-03.pdf
- e-Gov法令検索:労働契約法 https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 /労働基準法 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 /民法 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 /労働者災害補償保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000050 /労働安全衛生規則 https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 厚生労働省「労働契約法 参考資料(主な裁判例)」(最高裁 昭和50年2月25日判決) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/12.pdf
- 最高裁判所 昭和58年4月19日判決 https://www.courts.go.jp/hanrei/54260/detail2/index.html /平成8年2月23日判決 https://www.courts.go.jp/hanrei/55880/detail2/index.html
- 厚生労働省「こころの耳」事例紹介(最高裁 平成12年3月24日判決) https://kokoro.mhlw.go.jp/case/634
- 最高裁判所 昭和52年10月25日判決(判例解説による)
- 大阪労働局「労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/hourei_seido/kosin/keizoku/tanni.html
- 国税庁 タックスアンサー No.5364「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1700.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4120「弔慰金を受け取ったときの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4120.htm
この記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の保険商品の勧誘を目的とするものではありません。補償の内容は商品や契約内容によって異なります。法律・税務の判断が必要な場合は、弁護士・社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

「労災があるから大丈夫」という声は、よく聞きます。保険料の負担感が大きく、使う場面が少ないため、「払い続けているだけ」と感じやすい保険であることも確かです。それでも、死亡や後遺障害、損害賠償が起きれば、会社が払う金額は大きくなります。そして事故のあとには、ご遺族への説明やお見舞金の額など、お金以外のことにも向き合うことになります。小さな会社でも、人を雇っている以上は、少なくとも使用者賠償への備えをなるべく早めに検討していただきたいと考えています。