労災の会社負担はいくら?休業3日間の補償・4割の扱い・保険料を解説

労災の会社負担はいくら?休業3日間の補償・4割の扱い・保険料を解説

監修横田 正則株式会社キューブコンサルティング 代表取締役/損害保険トータルプランナー・AFP

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この記事は2026年10月時点の情報にもとづいています(最終更新:2026年10月18日)。

労災の会社負担とは、従業員が仕事でけがや病気をしたときに、会社が自分で支払うお金のことです。会社負担は、次の3つに分けると整理しやすくなります。1つ目は、法律上の義務として払う「休業1〜3日目の休業補償(平均賃金の60%)」です。2つ目は毎年払う「労災保険料(全額会社負担)」、3つ目は会社に責任がある場合に払う「損害賠償」です。

仕事中のけがや病気で4日以上休んだ人は、令和7年に135,333人でした。この記事では、労災が起きたときに会社が負担するお金と時間を、計算例とあわせて説明します。
(出典:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」2026年5月公表)

この記事のポイント
  • 業務災害で休んだ最初の3日間は、労災保険から給付が出ないため、会社が平均賃金の60%を休業補償として払う義務があります。
  • 休業4日目以降は労災保険から約8割が出ますが、残りを会社が払う法律上の義務はなく、会社に責任がある場合に損害賠償として請求されることがあります。
  • 労災保険料は全額会社の負担で、賃金総額に業種ごとの保険率を掛けて計算し、メリット制が適用される規模の事業では労災の発生状況で保険率が増減します。
  • 会社負担に備えるには、補償規程と、労災上乗せ保険・使用者賠償責任保険の内容を確認しておくことが大切です。
目次

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労災の会社負担とは?法律上払うお金と場合によって払うお金

労災の会社負担は、「法律上の義務として払うもの」「場合によって払うもの」「手続きの手間」に分けられます。会社に責任がなくても払うお金と、責任があるときに払うお金を区別しておくと、事故のあとで慌てずに済みます。

会社負担の3つの区分

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区分会社が負担するものいつ・どのくらい
法律上の義務休業1〜3日目の休業補償業務災害のときだけ。平均賃金の60%×3日分(本人の重大な過失で労働基準監督署長の認定を受けた場合を除く)
法律上の義務労災保険料毎年。賃金総額×業種ごとの保険率(全額会社負担)
場合によって払う損害賠償(慰謝料、休業損害の残りなど)安全配慮義務違反など、会社に責任がある場合
場合によって払う労災保険の給付の費用の徴収加入手続きを故意または重大な過失で怠っていた、保険料を滞納していた、会社の故意・重大な過失による業務災害など
場合によって払う労災保険を使わない場合の治療費など労災保険を使わなければ、会社が労働基準法の補償をすることになる
時間の負担請求書の証明、労働者死傷病報告、監督署への対応事故のたびに発生する

(出典:厚生労働省「労働災害が発生したとき」、同「労働保険とは」、労働基準法第75条・第76条、労働契約法第5条)

会社が直接負担しないもの

治療費(指定医療機関での治療)や、休業4日目以降の休業の給付は、労災保険から支払われるため、会社が直接負担するものではありません。労災保険料を払っていることで、こうした給付を国の保険で受けられる仕組みです。国の労災保険で足りない部分に会社が備える保険は、労災上乗せ保険とはで説明しています。

この章のポイント
  • 会社負担は、法律上払うもの・場合によって払うもの・手続きの手間に分けられます
  • 治療費や休業4日目以降の給付は労災保険から出るため、会社が直接負担しません

休業中の補償は待期3日間と4日目以降で負担が変わる

ここでは、業務災害で休んだ最初の3日間の休業補償と、休業4日目以降に会社が負担する可能性のあるお金を説明します。

休業1〜3日目(待期期間)の休業補償:平均賃金の60%を会社が払う

業務災害で従業員が休んだ最初の3日間は、会社が平均賃金の60%を休業補償として本人に払う必要があります。休業の初日から3日目までを「待期期間」といいます。この間は労災保険から休業の給付が出ません。
(出典:厚生労働省「労災保険に関するQ&A」3-4、労働基準法第76条)

待期期間の数え方:公休日も含む

待期期間の3日間には、会社の公休日(所定休日)も含まれると解説されています。なお、休業(補償)等給付は、療養のため働けず賃金を受けていなければ、会社の所定休日の分も支給されます。待期期間の3日間は、社会保険労務士の解説では、一般に次のように数えるとされています。公的な資料では、数え方の明記を確認できていません。
(出典:厚生労働省「労災保険に関するQ&A」3-2)

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ポイント数え方
連続していない場合同じ労災による休業日を通算して3日で満たす
所定労働時間内にけがをした日一般に、その日を1日目に数える(受診の時間帯などで扱いが変わるとする解説もある)
所定労働時間の後(残業中など)にけがをした日一般に、翌日から数える
公休日(土日など)療養のため働けない状態なら待期期間に含む

公休日が待期期間に入る場合に、会社が公休日分の休業補償を払う範囲については、厚生労働省の資料では明記を確認できていません。数え方や払う範囲に迷うときは、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。

計算方法と計算例

待期期間の休業補償は「平均賃金×60%×休業日数」で計算します。平均賃金は、原則として、けがをした日の直前の賃金締切日(締切日がない場合は前日)からさかのぼる3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数(カレンダーの日数)で割った金額です。3か月を超える期間ごとに支払われるボーナスや、臨時に支払われる賃金は含みません。
(出典:神奈川労働局「平均賃金について」)

一般化した例:月給30万円(3か月の賃金総額90万円、暦日数92日)の従業員が、業務中のけがで3日以上休んだ場合

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項目計算金額
平均賃金900,000円÷92日9,782円60銭
1日あたりの休業補償9,782円60銭×60%約5,870円
待期3日分の休業補償(会社負担)9,782円60銭×60%×3日約17,600円

時間給・日給のパートは、平均賃金に「最低保障」があり、計算が変わります。詳しくはパート・アルバイトの労災と会社の備えで説明しています。

労災で休んだ日数ごとに、会社の休業補償と労災保険の給付の範囲を示した図

待期期間の休業補償の注意点

注意
  • 通勤災害は対象外
    通勤災害には、待期期間の会社の補償責任はありません。
    (出典:福井労働局「休業(補償)等給付」)
  • 払わないと罰則
    休業補償をしないと、労働基準法違反として6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法第119条)。
  • 本人の重大な過失
    従業員の重大な過失によるけがで、労働基準監督署長の認定を受けた場合は、休業補償をしなくてよいとされています(労働基準法第78条)。
  • 税金
    労働基準法第76条にもとづく休業補償は、受け取る従業員にとって所得税の非課税所得です。会社の都合で休ませたときの「休業手当」(給与所得)とは扱いが違います。会社の経理の処理は、税理士に確認してください。
    (出典:国税庁 タックスアンサー No.1905、令和8年4月1日現在)

休業4日目以降と「残り4割」:会社に払う義務はあるか

休業4日目以降、労災保険の給付で足りない「残り」を、会社が払う法律上の義務はありません。労災保険からは、休業4日目以降、給付基礎日額の60%の休業(補償)等給付と、20%の休業特別支給金(休業(補償)等給付に加えて出る給付)が出ます。合計で約80%です。給付基礎日額は、原則として平均賃金に相当する額です。
(出典:厚生労働省「労災保険給付の概要」令和8年7月1日現在)

会社に責任がある場合の負担

ただし、会社が安全配慮義務(従業員が安全に働けるよう配慮する義務)に違反したなど、責任がある場合は、残りの約20%を含めて、従業員から「休業損害」として損害賠償を求められることがあります。このとき会社の負担は、2割ではなく「4割」になることが多いと言われます。

「4割」になる理由は、20%の特別支給金を賠償額から差し引けないためです。差し引けるのは労災保険の60%の給付だけです(最高裁 平成8年2月23日判決)。会社が払った待期3日分の休業補償は、その額の範囲で賠償から差し引けます(労働基準法第84条第2項)。

計算例:30日休んだとき、誰がいくら負担するか

一般化した例:月給30万円(平均賃金9,782円60銭、給付基礎日額9,783円)の従業員が、業務中のけがで30日休んだ場合。会社に責任があり、休業損害を1日9,783円として計算します。

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項目計算金額負担する人
休業1〜3日目の休業補償9,782円60銭×60%×3日約17,600円会社(義務)
休業(補償)等給付(4〜30日目)9,783円×60%×27日約158,500円労災保険
休業特別支給金(4〜30日目)9,783円×20%×27日約52,800円労災保険(賠償から差し引けない)
休業損害の総額(30日)9,783円×30日約293,500円―
会社に請求され得る休業損害の残り293,500円−158,500円−17,600円約117,400円会社(責任がある場合)

この計算例は、仕組みを示すための一般化した例です。実際の休業損害は、事故前の収入の実態をもとに計算し、従業員にも過失があれば過失相殺で減ることがあります(民法第722条第2項)。さらに、慰謝料は労災保険から出ないため、別に請求されることがあります。慰謝料の相場や損害賠償の計算は、労災の慰謝料・損害賠償・示談金で説明しています。

この章のポイント
  • 業務災害で休んだ最初の3日間は、会社が平均賃金の60%を休業補償として払います
  • 休業4日目以降の残りを、会社が払う法律上の義務はありません
  • 会社に責任があると、特別支給金を差し引けないため約4割を請求されることが多いです

治療費は会社負担?労災保険を使う場合・使わない場合

治療費は、労災保険を使えば会社の負担はありません。労災保険指定医療機関で治療を受けると、従業員は無料で治療を受けられます。指定医療機関以外の場合は、いったん立て替えて、あとで労災保険に請求します。
(出典:福井労働局「療養(補償)等給付」)

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労災を使わずに会社が治療費を払う場合の注意

一方、「労災を使わずに会社が治療費を払う」という対応には注意が必要です。

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確認すること内容
会社の補償義務労災保険を使わない場合、業務上のけがの治療費や休業補償は、会社が労働基準法にもとづいて補償することになる(第75条・第76条)
健康保険は使えない仕事のけがに健康保険は使えない。使ってしまった場合は、健康保険が負担した分を返納し、労災保険に請求し直す
報告の義務は残る会社が費用を払っても、休業4日以上なら労働者死傷病報告を遅滞なく出す義務がある。出さない・偽ると「労災かくし」として50万円以下の罰金
本人の請求の権利労災保険を請求するかは本人の意思。会社は請求を制限できない

(出典:労働基準法、厚生労働省「労災保険に関するQ&A」1-5・2-1、労働安全衛生規則第97条、神奈川労働局「『労災かくし』は犯罪です」)

軽いけがでも、あとで症状が悪化して長く休むことがあります。最初から労災保険の手続きを進めておく方が、会社の負担が予想外に大きくなるのを防げます。手続きの流れは労災申請で会社がすることで説明しています。

この章のポイント
  • 治療費は、労災保険を使えば会社の負担はありません
  • 労災保険を使わない場合は、会社が労働基準法にもとづいて補償することになります
  • 会社が費用を払っても、労働者死傷病報告を出す義務は残ります

労災保険料の負担と、メリット制の影響

ここでは、全額が会社負担になる労災保険料の計算方法と、労災を使ったときに保険料が増減するメリット制の仕組みを説明します。

労災保険料は全額会社負担:計算方法と業種別の保険率

労災保険料は、全額が会社の負担です。従業員の給与から差し引くことはできません。雇用保険料が会社と従業員の双方の負担であるのとは違います。会社は従業員を1人でも雇えば、パート・アルバイトを含めて労災保険に加入する義務があります。
(出典:厚生労働省「労働保険とは」)

労災保険料は「すべての労働者に支払う賃金の総額×労災保険率」で計算します。毎年6月1日から7月10日までに、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付します(年度更新)。あわせて、賃金総額の1000分の0.02の一般拠出金も納めます。
(出典:厚生労働省「労働保険の年度更新とは」)

業種別の労災保険率

労災保険率は、事業の種類ごとに1000分の2.5から1000分の88まで決められています。令和8年度は令和7年度と同じ率です。

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事業の種類(例)労災保険率(令和8年度)
金融業・保険業・不動産業1000分の2.5
卸売業・小売業・飲食店・宿泊業1000分の3
その他の各種事業1000分の3
食料品製造業1000分の5.5
ビルメンテナンス業1000分の6
建築事業(既設建築物設備工事業を除く)1000分の9.5
林業1000分の52

(出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「令和8年度の労災保険率等について」)

保険料の計算例

一般化した計算例:小売業で、年間の賃金総額が4,500万円の会社の場合を考えます。労災保険料は4,500万円×3/1000=135,000円です。一般拠出金は4,500万円×0.02/1000=900円です。

年間の賃金総額に業種ごとの労災保険率を掛けて労災保険料を計算する流れを示した図

労災を使うと保険料は上がる?メリット制の仕組み

労災を使うと保険料が上がるのは、メリット制が適用される規模の事業に限られます。メリット制とは、労働災害の多い少ないに応じて、労災保険率または保険料を一定の範囲で増減させる制度です。
(出典:厚生労働省「労災保険のメリット制について」)

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項目内容
対象となる事業保険関係の成立から3年以上たち、100人以上、または20人以上100人未満で災害の多さの係数(災害度係数)が一定以上の労働者を使用した事業
対象外20人未満の継続事業(建設業などの有期事業には別の基準がある)
反映される時期連続する3年度の収支率をもとに、その翌々年度の保険率が増減する
増減の幅基本は±40%
含まれない給付通勤災害の給付など(業務災害の給付が中心)
特例中小企業が安全衛生の取組(労働安全衛生マネジメントシステムなど)を行い申告すると、増減の幅が最大±45%になる(建設業などを除く)

一般化した例:食料品製造業で、年間の賃金総額が3億2,000万円の事業を考えます。通常の労災保険料は176万円(1000分の5.5)です。メリット制が適用され、増減の幅が±40%なら、年に最大で約70万円上下します。労災が少なければ保険料が下がる仕組みでもあります。

20人未満の継続事業の場合

20人未満の継続事業では、労災保険を使っても保険率は変わりません。この規模の会社は、保険料を理由に労災保険の手続きをためらう必要はありません。労災を使ったときの会社への影響の全体像(行政・刑事・信用・人の面)は、労災を使うと会社はどうなるで説明しています。

この章のポイント
  • 労災保険料は全額会社負担で、賃金総額に業種ごとの保険率を掛けて計算します
  • 保険料が増減するメリット制は、一定規模以上の事業に限られます
  • 20人未満の継続事業では、労災保険を使っても保険率は変わりません

会社に責任があるときの賠償と、国に費用を徴収される場合

会社負担が最も大きくなるのは、会社に責任があって損害賠償を求められる場合です。会社には、従業員が安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務、労働契約法第5条)があります。これに違反して労災が起きると、労災保険とは別に賠償を求められることがあります。

請求される主な項目

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請求される主な項目内容
慰謝料労災保険からは出ない。労災保険の給付を慰謝料から差し引くこともできない(最高裁 昭和58年4月19日判決)
休業損害の残り特別支給金を差し引けないため、休業損害の約4割になることが多い
後遺障害・死亡による将来の収入の減少(逸失利益)労災保険の年金・一時金で足りない部分

安全配慮義務の内容は安全配慮義務とはで説明しています。

国に給付の費用を徴収される場合

もう一つ、国に労災保険の給付の費用を徴収される場合があります。

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場合会社が負担するもの
加入手続きを、故意または重大な過失により怠っていた期間の事故さかのぼって保険料を徴収されるほか、給付額の100%(行政の指導を受けたのに手続きをしない場合)または40%(労災保険の適用事業になって1年を過ぎても手続きをしない場合)を徴収されることがある
労災保険料を滞納していた期間の事故給付の費用の全部または一部を徴収されることがある
会社の故意・重大な過失による業務災害給付の費用の全部または一部を徴収されることがある

(出典:厚生労働省「労災補償」、同「労災保険の加入手続について」、青森労働局「費用徴収制度について」)

この章のポイント
  • 会社に責任があると、慰謝料や休業損害の残りなどの賠償を求められることがあります
  • 加入手続きを怠っていた期間の事故などでは、国に給付の費用を徴収されることがあります

手続きと社内対応の手間というお金以外の負担

労災が起きると、お金のほかに、手続きと社内対応の時間がかかります。中小企業では、社長や総務担当が通常の仕事と並行して対応することが多いため、あらかじめ流れを知っておくと負担を減らせます。

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手続き・対応会社がすること
労災保険の請求書本人が手続きできないときは手伝い、「災害の原因及び発生状況」などを速やかに証明する
休業の請求書事業主の証明欄と、平均賃金の計算(平均賃金算定内訳)を書く
労働者死傷病報告休業4日以上は遅滞なく、4日未満は3か月ごとにまとめて労働基準監督署に出す(原則は電子申請)
健康保険を使ってしまった場合健康保険への返納と、労災保険への請求し直しを手伝う
待期3日分の休業補償平均賃金を計算して本人に払う
年度更新毎年6月1日〜7月10日に労働保険料を申告・納付する

(出典:労働者災害補償保険法施行規則第23条、厚生労働省「様式第8号」、労働安全衛生規則第97条、厚生労働省「労災保険に関するQ&A」2-1)

この章のポイント
  • 請求書の証明や労働者死傷病報告など、手続きと社内対応の時間がかかります
  • あらかじめ流れを知っておくと、社長や総務担当の負担を減らせます

補償規程と保険で会社負担に備える

会社負担のうち、労災保険料と待期3日分の休業補償は、金額の見通しが立ちます。備えが必要なのは、金額が読めない損害賠償と、会社が独自に払う補償金です。

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会社負担備えの例(一般的な仕組み)
会社に責任がある場合の損害賠償使用者賠償責任保険。賠償額から政府労災の給付などを差し引いた額をもとに支払う設計が一般的
会社が独自に払う補償金・見舞金労災上乗せ保険(法定外補償)。保険金は会社に支払われ、会社が従業員や遺族に渡す
休業中の収入の不足休業補償を加えられる設計がある。待期期間の扱いを含め、内容は商品によって異なる
弁護士への相談、事故後の費用法律相談費用・事業者費用の特約。保険会社の事前の同意が必要なことが一般的

補償の内容は、商品や契約内容によって異なります。事故のあと、保険会社の承認なく賠償責任を認めると保険金が減る場合があるため、早めに保険会社・代理店に連絡してください。

補償規程による上乗せと税金

就業規則などにもとづいて、法定の割合を超えて休業中の補償を上乗せする会社もあります。国税庁は、こうした付加給付金も、従業員にとって非課税になると整理しています。規程を作るときは、社会保険労務士・税理士に相談してください。
(出典:国税庁 タックスアンサー No.1905)

「労災があるから大丈夫」ではない理由

当社に寄せられる相談では、「労災があるから大丈夫」という声をよく聞きます。保険料の負担感が大きく、使う場面が少ないため、「払い続けているだけ」と感じやすい傾向があります。ただ、死亡・後遺障害・賠償が起きれば、会社の支払いは大きくなります。

会社に責任がある場合の賠償への備えは使用者賠償責任保険とはで説明しています。

この章のポイント
  • 備えが必要なのは、金額が読めない損害賠償と会社が独自に払う補償金です
  • 使用者賠償責任保険や労災上乗せ保険の内容を確認しておくことが大切です
  • 保険会社の承認なく賠償責任を認めると、保険金が減る場合があります

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よくある質問

労災で会社が負担するのはいくらですか?

業務災害で休んだ場合、会社に法律上の支払い義務があるのは、休業1〜3日目の休業補償(平均賃金の60%×3日分)です。月給30万円の人なら約17,600円です。このほか毎年の労災保険料があり、会社に責任がある場合は慰謝料や休業損害の残りなどの損害賠償を求められることがあります。

待期期間の3日分は公休日も会社が払うのですか?

待期期間には、公休日も数えると一般に解説されています。公休日分の休業補償を会社が払う範囲は、厚生労働省の資料では明記を確認できていません。待期期間は連続していなくても、通算して3日で満たします。迷うときは労働基準監督署に確認してください。

休業補償の残り4割は会社が払う義務がありますか?

いいえ、法律上の義務はありません。ただし、会社に安全配慮義務違反などの責任がある場合は、休業損害として請求されることがあります。特別支給金(20%)は賠償額から差し引けないため、請求される額は休業損害の約4割になることが多いです。

なぜ会社は労災を嫌がるのですか?

保険料が上がる、手続きの手間がかかる、監督署の調査があるといった心配が理由に挙げられます。しかし、保険料が増減するメリット制は、継続事業では20人未満の事業に適用されません。手続きを避けて労災を隠すと、罰金や信用の低下という、より大きな負担になることがあります。

会社が払う休業補償に税金はかかりますか?

労働基準法第76条にもとづく休業補償は、受け取る従業員にとって所得税の非課税所得です。会社の都合で休ませたときの休業手当は給与所得で、扱いが違います。会社の経理の処理は、税理士に確認してください。

通勤災害でも会社の負担はありますか?

通勤災害では、待期3日分の休業補償を会社が払う義務はありません。通勤災害の給付は、メリット制の収支率の計算にも含まれません。通勤災害の詳しい扱いは通勤災害とはで説明しています。

まとめ

  • 労災の会社負担は、「法律上の義務として払うもの(待期3日分の休業補償、労災保険料)」「場合によって払うもの(損害賠償、費用徴収)」「手続きの手間」に分けられます。
  • 業務災害で休んだ1〜3日目は、会社が平均賃金の60%を休業補償として払います。通勤災害は対象外です。
  • 4日目以降の残りを払う法律上の義務はありませんが、会社に責任があると、休業損害の約4割や慰謝料を請求されることがあります。
  • 労災保険料は全額会社負担で、継続事業のメリット制は20人以上の一定規模の事業に限られます。
  • 金額が読めない賠償や補償金には、補償規程と保険の内容を確認して備えましょう。

代理店の現場から(監修者コメント)

横田 正則 株式会社キューブコンサルティング 代表取締役

当社に寄せられる相談では、「労災があるから大丈夫」という声をよく聞きます。保険料の負担感が大きく、使う場面が少ないため、「払い続けているだけ」と感じやすい傾向があります。それでも、死亡や後遺障害、損害賠償が起きれば、会社が払う金額は大きくなります。

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この記事の監修者

横田 正則

株式会社キューブコンサルティング 代表取締役

損害保険トータルプランナーAFP宅地建物取引士相続診断士一種証券外務員コンクリート技士

保険代理店「ほけんの王様」を15年以上運営し、16社以上の保険会社の商品を取り扱う。マンション管理組合の保険をはじめ、中小企業の労災・賠償への備えについて、経営者からの相談に数多く対応してきた。AFP・宅地建物取引士・相続診断士として、保険と不動産・相続をあわせて考える提案を行っている。

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運営:株式会社キューブコンサルティング(保険代理店「ほけんの王様」) 会社案内 勧誘方針

参考資料

この記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の保険商品の勧誘を目的とするものではありません。補償の内容は商品や契約内容によって異なります。休業補償の計算・損害賠償・税務の判断が必要な場合は、労働基準監督署や社会保険労務士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

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