近年、社員による不正行為が目立ち、とりわけ横領や着服は一向に減る気配がありません。
このような状況は、企業にとって非常に深刻な問題です。

企業が従業員を信頼することは重要ですが、万一の不正行為が発生した場合、その損害は大きなものとなる可能性があります。
例えば、従業員が会社の金庫からお金を盗んだ場合、その損失は直接的な金額だけでなく、企業の信用にも大きな打撃を与えます。
身元信用保険に加入していれば、このような損害に対する補償が受けられます。

先日、ある企業で従業員が500万円を横領した事件が発覚し、大きな問題になったと聞きました。

ウチは従業員を信頼していますし、火災保険の盗難補償にも加入しているので、何かあっても安心です。

実は、従業員による横領は通常の火災保険の盗難補償ではカバーされないんです。

身元信用保険で補償される内容

被保険者と雇用等の関係にある者(被保証人)が行った不誠実行為によって被保険者が被った損害を補償します。

  1. 被保険者が所有する財産が不法に領得されたことによって被るその財産についての損害
  2. 被保険者以外の者が所有する財産が不法に領得されたことについて、その財産についての法律上の損害賠償責任を付帯することによって被る損害

不誠実行為とは

窃盗・不動産侵奪・強盗・詐欺・横領または背任行為をいいます。

保険金をお支払い例

  • 従業員が会社の売上金を金庫から盗み出し、私的な目的で使用した。
  • 顧客からの集金を会社に報告せず、従業員の個人的な利用のために使用した。
  • 従業員が切手や収入印紙を、勝手に売却し着服した。
  • 建設業の従業員が勝手に、会社の工具や仕入品をメルカリやヤフオクで売却し、利益を得ていた。
  • 運送業の従業員が、顧客の荷物であるノートパソコンを盗んだ。

ある企業で、従業員が500万円を横領したケースを考えてみましょう。
この500万円を取り戻すためには、利益率が約3.5%の企業の場合、約1億5,000万円の売上が必要となります。

身元信用保険に加入していれば、このような損害に対する補償を受けることが出来ます。

身元保証契約との違い

身元保証契約は、企業が新たに従業員を採用する際に行われることが一般的です。
身元保証契約では、保証人の財務状況や意思によって補償が不確実になる場合があります。

また2020年4月以降に損害賠償の記載がある身元保証書を取得する際には、極度額の明示がなければ無効となることに留意する必要があります。

一方、身元信用保険は、保証人がいなくとも保険会社が損害を補償するため、補償の確実性と信頼性が高いと言えます。

身元信用保険と身元保証契約の違いについて、ご確認ください。

身元信用保険身元保証契約
補償範囲財産損害財産損害、信用損失、業務妨害など広範囲
補償方法保険会社が損害を補償身元保証人が損害を補償
契約主体企業と保険会社企業、従業員、身元保証人
責任範囲保険会社が契約条件に基づいて補償身元保証人が法的責任を負う
身元保証の有効期間保険契約は1年間。継続することで限度なし基本的に3年間。当事者間で期限を決める場合5年間
保証額の上限保険契約内容による身元保証書にて個別に設定

業務上横領など企業犯罪が発生したら

業務上横領が発生した場合の企業の一般的な対応手順をご紹介します。
事案ごとに異なる状況に対応するため、弁護士の助言を受けながら適切な措置を取ることが重要です。

STEP
弁護士に相談

業務上横領の疑いがある場合、まずは企業犯罪に精通した弁護士に早急に相談することが重要です。弁護士は事案の調査や適切な対応策の提案を行います。

STEP
事実関係の調査

証拠の有無に応じて、事実関係を調査します。証拠がある場合はそれを集め、証拠がない場合でも弁護士の指導を受けながら進めます。

STEP
本人への事情聴取

容疑者である場合、最終的に本人から事情を聴取します。事情聴取の前に、周囲の証言や証拠を収集し、事実関係を把握します。

STEP
会社方針の決定

調査が終了した後、会社は損害賠償請求、懲戒処分、刑事処分の方針を決定します。被害の有無や悪質性を考慮し、適切な措置を検討します。

STEP
損害賠償の請求

被害を回復するために、損害賠償の請求を検討します。相手の反応や証拠の状況に応じて示談交渉や民事訴訟の準備を進めます。

STEP
被害届や刑事告訴の検討

業務上横領が認められた場合、懲戒処分を実施します。懲戒解雇も視野に入れ、手続きを適切に行います。

STEP
懲戒解雇の検討

悪質な業務上横領の場合、刑事訴追を検討します。ただし、示談や被害回復の状況によっては、刑事処分を求めない場合もあります。

身元信用保険 よくある質問

身元信用保険では、下請負人や派遣労働者を補償の対象とすることは可能でしょうか。

身元信用保険では、下請負人や派遣労働者を被保証人として加入させることはできません。

被保険者と下請負人との間には雇用関係がないためです。
身元信用保険では、被保証人としては、被保険者と「雇用等」の関係にある者に限定されます。

役員による業務上横領は、補償の対象となりますか。

身元信用保険では、従業員など雇用関係のある者に限定されるため、雇用関係のない役員については補償対象外となります。

どのくらいの補償を受けることができますか。

保険会社によっても異なりますが、一般的には1,000万円が上限とされています。

どのような業種でも加入できますか。

はい。業種による制限はありません。

身元信用保険 まとめ

身元信用保険は、補償の確実性や簡便な手続き、保証人の不要、リスク管理の効率化など、多くのメリットがあります。
企業は従業員の不正行為によるリスクを効果的に管理し、安心して業務を遂行することができます。

企業の規模やニーズに応じて、身元信用保険の導入を検討することをオススメします。